知らなかった茅ヶ崎をもっと知り、もっと好きになり、
もっと楽しめる!茅ヶ崎を知り尽くす情報サイト

チガサキゴトよ、チーガ

  • facebook
  • instagram
  • twitter

チガサキゴトよ、チーガ

OTHER

NEW

川廷昌弘さんと語り合う チガサキのたくらみごと

“きれいごと”で茅ヶ崎はもっと面白くなる!?
かわていさんと語り合うチガサキのたくらみごと

vol.1 砂山とんぼ

茅ヶ崎

今、茅ヶ崎のまちで同時多発的に起こっ ているたくらみごと(※1)。このコーナー では、活動の本質に迫り、茅ヶ崎の未来を紐解いていきます。今回は、海沿 いのサイクリングロードに溜まった砂 を楽しみながら取り除くプロジェクト 「砂山とんぼ」の発起人・久保田恵子さん、 郡恵美さんの登場です。

「地球にいいこと」とか、「未来のために」 なんて、いい人ぶってるみたいで恥ずかしい?「いやいや、これからはきれいごとで勝負でしょ!」と断言するのは、 “きれいごと委員長” かわていさん。曰く、“きれいごと” は、まちの未来を面白くするキーワードなのだとか。

困ってるなら、つくっちゃおう!

茅ヶ崎
市立西浜中学校、第一中学校のソフトボール部の皆さんと一緒に活動。
地域の方々との連携も、砂山とんぼのたくらみのひとつ。

か:そもそものきっかけは何だったんですか?

久:2017年の秋の台風の後、サイクリングロードに砂が溜まってて、そこに置いてあったトンボ(整地用具)をかけてみたんです。そうしたら、自転車の人が私がかけたところをすーって通って行って、「すごく通りやすくなってる!」ってうれしくなって、Facebookに投稿して。

か:そこが道になったんだ。達成感があるね。

郡:私はその日、ランニングで通ったんです。投稿を見て、「恵子さんがかけてくれたんですね、ありがとうございます!」ってコメントして。「でもトンボ少ないよね」って話になって。

久:みんなが困って文句言ってるのも知ってるから、「何個もあったらいいね」、「じゃあ、つくって置いちゃおうか」って盛り上がって。

か:“きれいごと委員長”としては、きれいごとを言って行動している人の気持を解き明かしていきたいんだけど、なんで世のため人のためにそんなことしたいんですか? 

久:私は建築の仕事をしているんですが、自分の敷地の周りも含めて自分の暮らしている場所で、周りを良くすることで自分の家も良くなるし暮らしも良くなるし、まちもそうやってできていく、という想いがすごくあるんです。行政に言わなくても、ちょっとトンボをかければ通りやすくなるよね、という感覚を伝えたくて。

か:家の周りも家から見える風景だし、家もその中の空間にあるものだから一体なんですよね。それと同じで、自分が住むこと自体がまちづくりになっているんだという当たり前のことに、想いが至っているんだなぁ。

「いいことしたい」じゃない。

茅ヶ崎
茅ヶ崎人が集う「チガサキのたくらみごと」会議(@チガラボ)の様子。
次々に意見が飛び交い、ワクワク創出の場となっている。

か:なんとなく茅ヶ崎の人は「文句言わずに自分で」って感覚の人が多い気がするんですが、自分のまちのことが好きで暮らしている人が多いから自分のことが好きになるのかな。なんでいいことしたいのかな、って。

久・郡:いいことしたいんじゃないなぁ…。

郡:私は誰かがやってくれなくてイライラするのが嫌なんです。学級委員とかも、誰もやらなくて「しーん」としてたら「じゃあ 、やります」って手を挙げちゃうタイプ(笑)。

か:責任感があるんだね。困っていることがあったら、「人がやらないなら自分がやったほうが早いわ」っていう感覚。

久:私は違うなぁ(笑)。そういうふうに思うタイプじゃない。

か:じゃあ、なんで砂山とんぼ?

久:なんかすごくこれ(トンボ)に可能性を感じたんです!

か:なんの可能性ですか!?

久:海に携わるものじゃないですか。海の砂をかく。海と茅ヶ崎の暮らしは切り離せないから、これをやることによって、やった人に何か気づきがあるんじゃないかな、って。

か:トンボはコミュニケーションツールなんですね。ビーチや海って茅ヶ崎のまちの財産じゃないですか。「そのことに気づいてね」、「まちとの絆を感じてね」って。トンボをかける者同士のコミュニケーションもあるから、みんなに一体感が出てくるんだろうなぁ。

サーフィン、フラ、ヨガ、そしてトンボ!

茅ヶ崎
第6回トンボ制作メンバーのみなさん。
海に置いてあるトンボは「誰でも自由に使ってほしい」とのこと。

郡:この前、自分が砂をかいたことでベビーカーとか車椅子の人が通れたことがあって、すごい感動したんですよね。あと、自分が好きでやってることなのに「ありがとう」って言ってもらえるのがうれしくて。

か:ははは、そりゃ言いますよ。僕もかけている人をみたら「すいません」って謝ってますよ。「自分も道を使うのにやってなくてごめんなさい」って申し訳ない気持ちになりますね。

郡:あ、そういう人いる〜!でも「申し訳ない」と思わせてしまうのは、逆に私たちとしても申し訳ない。

か:しまった(笑)。

久:「やってて偉い」って思ってほしくなくて。

郡:お礼を言われるとうれしいけど、それが目的じゃない。

久:これをきっかけに海に遊びに来るようになるのもいいな、って。レジャーですね。

か:レジャーにしたい!トンボがけを?これをしに来て汗かいて帰るのが目的?

久・郡:サーフィン、フラ、ヨガ、トンボ!

か:みんなが幸せそうにトンボがけしてる、と。

久:スポーツゴミ拾いならぬ、スポーツトンボみたいな。色をつけてるのも、持っているとおしゃれで楽しくて、「なんとなくトンボをかけちゃう」みたいな感覚になればいいかなって。

「いつの間にか関わってた」という筋書き

茅ヶ崎
メンバーの自由な発想で生まれたアートなトンボたち。

か:だんだん砂山とんぼのイメージが変わってきたなぁ。

久:真面目に「いいことやってるんです」って言ってると、それに興味がある人はやると思うんですけど、それ以外の人は入って来ない。でもレジャー的感覚なら取り組みやすいかな、と。

か:「自分が通りにくかったからやりました」みたいに気軽な気持ちで。

久:で、「いつのまにか関わってた」みたいな。それで「まちのことを考えるようになりました」って筋書きになったらいいな、と。

郡:いっぱいつくってトンボが目に入るチャンスが増えれば、そういう人も増えるかなって。

か:置いてあることに気づけば、かけてみようかな、って気持ちにもなりますよね。それでちょっと社会意識というか、まちへの意識を持ってほしいな、と。まちはみんなで住んでみんなで生きているんだから、「あなたにだって多少なりとも責任があるのよ」っていうことに気づいてほしいってことですね。

久:そう。だから海の活動だけど、思い描いているのは、茅ヶ崎のまち全体なんです。山から川を流れて海へ出て、すべてがつながっているということと、まちと暮らし。

か:自然の循環そのものをイメージとして大きく持っているんだけど、アプローチとしては、自分の家だから、自分の属しているコミュニティだから、自分が住んでいるまちだから、自分でもキレイにしたいという気持ち。それと同じで、行政も市民が頑張ってくれているから行政ができることを頑張ろう、という連鎖が起こるといいね。

久:そうなってほしいです。行政がやるべきことをやって、市民もできることをやって、お互い協力しないといいまちになりませんよね。お互いの想いをキャッチボールできたらいいな、って思います。

茅ヶ崎に、きれいごとを褒め合う文化を!

茅ヶ崎
年4回、トンボ制作を実施。次回は南湖公民館にて12月8日に開催予定。

か:今、活動はどんなふうに?

久:トンボの制作日だけは決めていて、年4回。まちの廃材を使ってつくっています。トンボがけは、相手が自然なので、いつ砂が溜まるかわからないし、できる人ができるときにやる感じです。うれしいことに、私たちが知らない人もやってくれてるみたいです。

か:すごい主体的ですよね。

久:すごくハードルの低いまちへの関わり。

郡:楽しんでやってたらまちが良くなって、そして健康にもなれる。

か:SDGs(エスディージーズ)(欄外)って知っていますか?2030年に向けた17の国際目標で、「誰ひとり置き去りにしない社会をつくりましょう」って呼びかけているんですが、砂山とんぼで言えば、3番(健康と福祉)、11番(まちづくり)、14番(海を守る)なんかがまさに一致してますよね。ローカルな活動だけどグローバルにつながっているんです。

久:私もSDGsのことを知って、「完全にリンクしている!」と思って驚きました。

郡:「私たちが言ってることじゃん!」って。

か:なるほど、「私がやりたいのはこういうことだ」ってSDGsに教えられたんですね。でもふたりが言っていることはそもそもSDGs的な感覚なんです。SDGsって法律でもなければルールでもなくて、主体性に委ねられている。「誰もやらないなら私がやります」、「その裏にはたくらみがあります」とか言ってるのも、いずれもSDGsっぽいと言うか。

郡:この前の台風のあとも、みんながすごく主体的にゴミ拾っていましたよね。茅ヶ崎の人ってそういうところがある気がします。

か:サーファーも海に入ってからひとつゴミを拾って帰りますし、海的感覚なのかな。茅ヶ崎には、誰もが砂山とんぼみたいに主体的に新しいことをやりやすい空気感がある。みんなが思いをかたちにしていこうという動きが循環していくまちで生活できたら、最高に面白いと思いませんか?きれいごとは、これまでは揶揄されるものでしたが、これからは行動すること。 茅ヶ崎で、きれいごとを褒め合うような文化を育てていきたいですね!

【きれいごと委員長】

かわていさん

きれいごと委員長
かわていさん

博報堂にて37年間、国連における環境3大テーマ(気候変動、生物多様性、森林保全)からSDGsまで、国家規模、地球規模の錚々たるプロジェクトを手がけてきた。2023年に定年退職後は、日本写真家協会の写真家として活躍中。

砂山とんぼ
海沿いのサイクリングロードに溜まった砂を楽しみながら取り除くプロジェクト。廃材を使って砂をかくための「トンボ」を制作し、海岸沿いに設置。目についた人が自然にトンボがけを行うようになる光景を思い浮かべながら、日々自主的にトンボがけを行っている。Facebookグループ「チーム砂山とんぼ」には、活動に共感した約50人のメンバーが参加。密かなたくらみは、「トンボがけをしていたらいつの間にかまちのことを考えていた」という人を増やすこと、行政と想いをひとつにして住み良い茅ヶ崎のまちをつくること。

“きれいごと”とは
みんなが本当はこうした方が良いと思っている「きれいごと」。そのままに行動するとこれまでは揶揄されましたが、これからは未来世代のための行動を褒め称える社会をつくっていきましょう! 

SDGs
SDGsは、2030年までに持続可能な社会を実現するために世界が合意した国際的な目標。2015年9月の国連総会で採択された。「貧困の撲滅」から「パートナーシップ」まで、社会、環境、経済の3つの側面が含まれた17の目標で構成されている。SDGs自体を目的化せず、コミュニケーションツールとして使いこなすことがポイント。

たくらみごと
暮らしの中の小さな困りごとを、ちょっとしたアイデアで楽しみながら解決していくプロジェクトのこ。ウェブメディア「TAKURAMI」では、試しにやってみたくなるようなたくらみごとを紹介している。 https://takurami.org/


writer:池田美砂子
フリーランスライター・エディター。茅ヶ崎市在住、2児の母。
大学卒業後、SE、気象予報士など会社員として働く中でウェブマガジン「greenz.jp」と出会い、副業ライターに。2010年よりフリーランスライターとして、Webや雑誌などメディアを中心に、「ソーシャルデザイン」をテーマにした取材・執筆活動を開始。聞くこと、書くことを通して、自分が心地よいと感じる仕事と暮らしのかたちを模索し、生き方をシフトしている。

RELATED ARTICLES関連記事