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チガサキゴトよ、チーガ

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ずっと茅ヶ崎で暮らしたい

白峯寺の寺猫に見送られて

 年末のこの時期になると、19歳で逝った愛猫チビを思い出す。

 チビが逝ったのは6年前。年のわりに元気ハツラツだったが、10月の終わりに突然お腹を下し、主治医から腸腺ガンと診断された。余命は長くて半年。年が年なので手術はせず、ステロイド剤と抗生剤で対処しましょうと言われたが、そんなに衰弱しているようにも見えなかったので、当時は「え、本当に?」「元気だけが取り柄みたいな猫だから、何のかんの言って案外長く生きるのでは」とたかをくくっていた。

 ところが、チビはその後ゆっくりと弱っていった。しばらくは食欲旺盛だったが、12月も半ばを過ぎると大好きなカツオブシしか口にしなくなった。モサモサの長毛のおかげでやつれたようには見えなかったが、抱っこするとガリガリになってしまったのがよくわかった。

 そして12月も押し詰まったある日の夕方、チビはおしっこまみれになってトイレのそばで倒れていた。もう四肢に力が入らず、以降寝たきりとなり、それから1週間ほどして旅立った。最期は目が見えなくなっていたようだが、私の顔を見ながらか細い声で「ニャー、ニャー」と鳴いて事切れた。「じゃあね、もう逝くよ」と告げているかのようだった。

 悲しみから逃げたかった私は、すぐにお弔いの手続きに入った。ペットの葬儀を請け負う「白峯寺」というお寺が下寺尾にあることを知り、すぐさま連絡を入れる。年末は混んでいるため火葬は年明けになると言われたが、たった今死んだことを伝えると、「死後硬直が始まる前に保冷剤を胸に当てて、段ボールにタオルを敷いて安置してあげて下さい」とアドバイスしてくれた。気遣いの感じられる穏やかな口調だった。

 とはいえ、ペットの葬儀業者は玉石混交。実際知り合いの中には、お骨が真っ黒な灰になって返された人もいる。大事なチビちゃんの最後が台無しにされたらと思うと、正直不安でならなかった。

 だが、それは杞憂だった。出迎えてくれた方は親切で礼儀正しく、火葬の前に十分なお別れの時間を取り、何よりお骨がきれいに残るよううまく火葬してくれた。

 火葬炉から出てきたチビのお骨は、ちょうど横向きに寝た形で並んでいた。担当の人は「これが頭、胴体、そして足。チビちゃんは足が長い子だったようですね」と説明してくれた。長毛でいつもモコモコ歩いてたから、足が長かったなんて、お骨になるまで気づかなかったよ……。

 ちなみに白峯寺の火葬は、うちのように火葬に立ち合い収骨する「立会葬」と、合同で火葬して共同墓地に入れる「合同葬」、お寺側にお任せして個別で火葬する「個別一任葬」、その後遺骨をお家に届けてくれる「個別一任葬お届け」などがある。個別でも合同でもどちらでもいいと思うが、個人的には万難を排してお寺までぜひ足を運んでいただきたい。白峯寺は風光明媚なお寺で、敷地内にはたくさんの寺猫もいる。猫たちがともに見送ってくれると思うと、別れの寂しさもいくぶん癒されるような気がする。

 チビを見送った後、お骨を持ってそのまま海へ行った。薄暮の海岸で供養がしたかった。海に向かって「チビ、バイバーーーイ!」と絶叫すると、瞬間冬の冷たい海風がザザアアーっと顔に打ち付けた。わー寒い寒い、もう帰ろうと慌てて家路に着いたが、あれってもしかしたら「さいならー」の最後の挨拶だったのかな。

白峯寺動物愛護の会
茅ヶ崎市下寺尾1551
フリーダイヤル0120-055940


藤原千尋
ふじわらちひろ/1967年東京生まれ、2006年より茅ヶ崎市松が丘在住/出版社勤務を経て単行本ライター。ビジネス、教育、社会貢献、生き方老い方など幅広いジャンルの企画とライティングを手がける。

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