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チガサキゴトよ、チーガ

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トラベリングミュージアム

茅ヶ崎市美術館

生まれたての3つのオブジェクトと茅ヶ崎市美術館の旅をする

人の手のひらの上で小さな美術館が立ち上がるような体験を贈りたい

茅ヶ崎市美術館が、デザイナーと地域の工房と共に3つのミュージアム・ギフトを制作しました。

「コロナ禍に見舞われた頃、全国のミュージアムが休館を余儀なくされ、茅ヶ崎市美術館も人々を迎え入れることができないという時間を過ごしました。これまでに経験のない時間の中で気づいたのは、そもそも美術館に『来られない人/来ない人』の存在でした」

と語るのは、このプロジェクトを企画した茅ヶ崎市美術館の学芸員、藤川悠さん。 この気づきをきっかけに『人の手のひらの上で小さな美術館が立ち上がるような体験を贈ることができないか』という想いを、建築家・デザイナーの齋藤名穂さんと共にミュージアム・ギフトの形にしたのが、本プロジェクト〈トラベリング ミュージアム〉です。

 今回小誌は、タイトルにも入っている「トラベリング=旅」というキーワードからヒントを得て、生まれたばかりの3つのオブジェクトと美術館を「旅」をするように撮影しました。

 七宝焼の〈ちょうちょ〉はモチーフに合わせて屋外へ。美術館につづく坂道の木の幹で撮影した後に、足元に鮮やかな苔が芽吹いているのを見つけ改めて撮影。藤川さんと相談して後者を掲載しました。

 その日は朝から曇っていたのですが、シャッターを切る間だけ太陽が顔を出し、木漏れ日が落ちました。こんな偶然もまた旅の醍醐味なのかもしれません。

 他のオブジェクトはいずれも美術館内で撮りました。写真をもとに茅ヶ崎市美術館へ答え合わせの旅に出かけませんか。

美術館へつづく緑豊かな坂道を、軽やかに舞う蝶々がモチーフ。銅板に白の琺瑯釉薬(ほうろうゆうやく)をかけ、羽の片面には茅ヶ崎の浜辺の砂を振りかけて焼成している。釉薬の薄い部分は銅が琺瑯と反応し、波打ち際を彷彿とさせる緑青色となっている。

七宝焼のオブジェクト11,000円(限定17セット/蝶々は1つ入り) 
デザイン:齋藤名穂   /   制作:湘南七宝燒(茅ヶ崎)/小さな絵本、サイン&エディションNo. 入り


地下と地上をつなぐ特徴的な階段をはじめ、館内の様々な階段がモチーフ。自然豊かな周辺の環境を想像させる「木」が素材。プラタナスの柔らかな木肌とカーブを描く滑らかな表皮が特徴。1つの形から2つの形が現れることで空間的な拡がりをみせる。

11,000円(限定17セット) デザイン:齋藤名穂   /   制作:東京チェンソーズ(東京・檜原村)
小さな絵本、サイン&エディションNo. 入り
エントランスの大きなガラス面や展示室の天窓からの光など、茅ヶ崎市美術館にそそぐ様々な光がモチーフ。幾層にも重ねられたガラス板の間には、差し込む光の形や美術館の建物の模様を写し取ったフロッタージュのフィルムが挟み込まれている。

非売品  /  デザイン:齋藤名穂   /   制作:ぐり工房(寒川町)

〈あなたにとっての美術館での一日〉を「絵はがき」にして教えてください。

 〈トラベリング ミュージアム〉 のスタートは2022年、昨年の夏にさかのぼります。美術館のエントランスに、来館した皆さんに向けてこんなメッセージを掲げたコーナーを設置しました。

〈テーブルにある色紙と鉛筆を使って、「今日、あなたが美術館で発見したこと」を教えてください。旅先から友達に絵はがきを送るように、今日の美術館での1日をこのプロジェクトのために教えてくれると嬉しいです。〉

絵はがきを製作している様子/ 2022年、夏

絵はがきは毎日増えて、夏の終わりには600枚になりました。

集まった600枚の「絵はがき」がミュージアム・ギフト〈トラベリング ミュージアム〉になるまで

6つの〈見えないカタチ〉をシンプルな形状と言葉でつづった美術館の空間をめぐる小さな絵本

330円 (限定100部)
著:齋藤名穂 編集・発行:茅ヶ崎市美術館

 集まった600枚の絵はがきをもとに、美術館をめぐる〈見えないカタチ〉を齋藤名穂さんが

6つのシンプルな形状と言葉をセットでデザインしました。

 さらにその中から3つを選び、地域の〈七宝焼(湘南七宝燒)〉、〈ガラス(ぐり工房)〉、〈木(東京チェンソーズ)〉の職人の方たちと一緒に形にしました。

「職人の方のものづくりはとても勉強になりました。七宝焼の〈ちょうちょ〉には茅ヶ崎の海岸の砂が使われているのですが、中嶋亮介さんのアイデアでビーチコーミングで拾ったものから乾いて落ちた砂を使っています。また、ちょうちょが羽を広げ、且つ自立する角度の研究にも頭がさがりました」 

と藤川さん。そうして完成したのが、茅ヶ崎市美術館として初の試みとなるミュージアム・ギフト〈トラベリング ミュージアム〉です。

 茅ヶ崎市美術館の空気感があなたのもとへ、そして、誰かの手に届きますように。

    


茅ヶ崎市美術館  CHIGASAKI CITY MUSEUM OF ART

1998年4月開館。海街ならではの、松林を抜ける潮風、降り注ぐ太陽の光を受け、軽やかに飛び立つ翼のような屋根が特徴的な建物。地域ゆかりの作品収集を行なうとともに、自然豊かな環境を活かした教育プログラムを実施。近年では、視覚のみならず触覚や嗅覚など、人の五感を用いて鑑賞する展覧会を企画するなど、美術館での 鑑賞体験の拡張を試みている。
—–
設計:株式会社 洋建築企画
全国コンペにより決定。〈第43回神奈川建築コンクール〉優秀賞受賞

齋藤名穂 SAITO Nao

建築家、デザイナー。UNI DESIGN主宰。「建築空間を、五感や個人の空間の記憶を頼りにデザインする」をテーマに、見えない人と見える人が一緒に読む地図や場所の記憶を引き継ぐ家具のデザインなど、幅広いプロジェクトを手がける。東京都生まれ、在住。

藤川悠 FUJIKAWA Haruka

茅ヶ崎市美術館 学芸員。現代アートを中心に視覚以外の感覚も使った展覧会を企画。文化庁メディア芸術祭選考委員、オリンピック・パラリンピック公式文化プログラム「Our Glorious Future KANAGAWA 2021」アート部門キュレーション等を務める。

INFORMATION

茅ヶ崎市美術館  CHIGASAKI CITY MUSEUM OF ART

住所 茅ヶ崎市東海岸北1-4-45
駐車場 Pあり
TEL 0467-88-1177
営業時間 10:00〜17:00
定休日 月休 
URL 茅ヶ崎市美術館/HP

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