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チガサキゴトよ、チーガ

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「旅する絵描き」古知屋恵子

画像をクリックすると古知屋恵子さんのインスタグラムに飛びますhttps://www.instagram.com/kochiyakeiko/

茅ヶ崎のさまざまな場所で目にする古知屋恵子さんの作品。チーガを配架している齋藤助産院さんもそのひとつ。院内には古知屋さんの原画がいくつも飾られていて、ポストカードなどの販売もしています。地域の人に愛される作品を制作し続ける古知屋さんのアトリエを訪ねてきました。

いろんな人がいるから面白い

アン・ドウ・トロワ 木版画 2007年 185× 170 mm

 木版画の『アン・ドウ・トロワ』(写真右)はそれぞれ思い思いにバレエを踊る3人の子が描かれています。

「みんな違う格好して踊っていて性格も違いそうでしょ。世の中はいろんな人がいて、それだから面白いというふうに思っているんです」

 作品を観た人が、それぞれの物語を想像できるような作品を作っていきたいという古知屋恵子さん(以下、古知屋さん)。

「作品に対する作家としての思いとしてはありますが、意図的には見せていません。みなさんが自分に置きかえて作品を観てくれるので、作品は自分のものじゃなくて観る人のものだと思っています」

 基本的にはクスッって笑えるものを作りたいなという思いで作品と向きあっているそう。

木版画制作の様子。彫刻刀で迷いなく繊細な表現をほどこしていく

小学生から通っていた、近所の絵画教室

 幼い頃、古知屋さんはお姉さんと一緒にバレエやエレクトーンを習っていたのだそう。うまくできるお姉さんと違って、いつも落ちこぼれ。絵を描くのが好きだった古知屋さんは絵の中では上手にバレエを踊る自分を描いていました。

 そんな彼女を見て、母親が勧めたのが近所の絵画教室。。小学校二年生からはじめた週に一度の教室は十年間、高校まで続きました。

 「描く仲間がいた方がいい」高三になり、絵画教室の先生が勧めたのは美大の予備校でした。中学からずっとひとりで描いてきた古知屋さんは、描く仲間ができて感動します。同じモチーフでもひとりずつ表現が違う。みんな違うから面白い、人と自分の違いを楽しむものが表現だ、ということを発見した古知屋さんはますます絵を描くのが好きになり、現役で多摩美術大学の油画科に入学しました。

田舎でも都会でもない茅ヶ崎

 古知屋さんの展覧会は毎年秋に、茅ヶ崎の近郊からはじまります。そして年を越して春夏に少し遠くの地域で滞在しながら展覧会をしてまわります。この独特なスタイルはどのようなことがきっかけではじまったのでしょうか。

「茅ヶ崎は都会でも田舎でもない。気候も暑すぎず寒すぎない。君は成績も中間、大金持ちでも貧乏でもない。人は感動する心が大切なんだよ。長い冬を耐えて春を迎える感動や田舎から都会に来た驚き、君は感性を自分で意識して育まないといけないよ」

 中学生の古知屋さんにかけてくれた絵画教室の先生の言葉は、その後もずっと古知屋さんのなかで意識し続けることになります。

「うちは、祖父母もみんな茅ヶ崎に住んでて田舎がなかったんです。大自然の中に出るような体験も全くなかったから、このままだとダメだ、旅をしようってずっと思っていました」 

旅する絵描きの旅スタイル

 絵描きになって作品がたまってきた古知屋さん。いざ旅に出ようとした時にある問題にぶちあたります。『旅をするにはお金がかかる』。そこで考えたのが『作品展をしながら旅をする』というスタイル。

 地方の展覧会では現地の人の家に泊めてもらって一緒にご飯を作ったり、その家族と話したりするうちに、絵のアイデアが浮かびます。知らない世界を知ることもできて一石三鳥なんです。

「今年は北海道に2ヶ月滞在しました。スーツケースに作品や紙芝居なんかを一式詰めて、他にもたくさんの荷物を持って行きます。昨年の九州は、福岡から始まり、大分からフェリーで大阪、大阪では急遽アーティストの友人と合同で展覧会をしてまわり、そのご縁で奈良まで足を伸ばしました。その土地に行くと不思議にどんどん人が繋がって次の展覧会が決まっていくんです。

カフェ・ギャラリー街路樹オーナーとの出会い

「表現者はみんな表現すればいいと思います。絵を描きたい人は描けばいいし、歌いたい人は 歌えばいい。どんな絵でも歌でもいい、素敵なことです」

そう話すのは、茅ヶ崎で40年続く街路樹のオーナー。古知屋さんを作家デビューさせた方です。

 古知屋さんが初めて街路樹(当時は陶器中心の雑貨屋)を訪れた時、美大は出たものの、作家として生きていくことを決断できていませんでした。古知屋さんが自分は絵描きだと告げた際に、オーナーは古知屋さんの絵を見ない状態で「あなた、明日からこの壁に絵を飾りなさいよ」と声をかけてくれたのだそう。それがきっかけで毎年欠かさずこちらで展覧会をするようになりました。

狼に気をつけて 水彩 2014年 305× 230 mm

地域を拠点に続ける作家活動

「初個展から作り続けたカレンダーも29冊目になりました。その間に結婚して子どもも生まれ。7年目の街路樹の展覧会の後に妊娠、出産で、一年後の展覧会にはすでに子どもは3ヶ月になっていたのでお客様はみんなびっくり。会場には授乳室、そんな年もありました。昔からのお客様は私の人生を知っていて、今年はどんなことが起こったの? あんなに小さかった子が独立したんだね、って。古くからの友人みたいに見守ってくれている感じが嬉しい。私が長く続けてこれたのは、茅ヶ崎のお客様のおかげなんです」

古知屋恵子さんの作家活動は29年目。茅ヶ崎の2か所で同時開催される「街路樹」・「とどや」の展覧会は、11月2日からはじまります。

楽園 水彩 2024年 395×305mm

カメラ:ライター:小嶋あずさ

INFORMATION

カフェ・ギャラリー街路樹

住所 茅ヶ崎市中海岸2-5-5 マンション茅ヶ崎110
TEL 0467-58-1231
営業時間 open : 11:00-18:00
定休日 定休日 : 月曜
URL instagram

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