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茅ヶ崎の北部丘陵里山環境に住むマニアックないきもの図鑑 file.29

オオイヌノフグリとナナホシテントウ
DATA : ヨーロッパ原産の越年草。明治初期に東京で発見され、その後日本中に広がった「帰化植物」。現在はアジア、南北アメリカなど世界中に広く分布する。
⌘ 澄んだブルーで一斉に咲く雑草
10mmほどの花を咲かせるかわいらしい雑草、オオイヌノフグリの花は澄んだブルー。一斉に開花する様子が夜空に星が瞬くように見えることから「星の瞳」とも呼ばれています。
本家の「イヌノフグリ」(日本の在来種/本州中部以南に分布)の花は3〜4mmほどのくすんだ淡紅色。名前の由来は種子の形が犬のフグリ(陰嚢)に似ているから。現在では絶滅危惧種に指定されています。また、春の季語に「イヌノフグリ(いぬふぐり)」がありますが、明らかにオオイヌフグリを指す俳句もあるようです。
⌘ 受粉の方法と種の形状で世界に広まる
花にはシジミチョウ、ハチやアブなどの仲間が吸蜜にやってきて受粉します。早春は気温が低く昆虫が訪花しない日もありますが、オオイヌノフグリは「自家受粉」ができるのです。花の中心にあるおしべ。その外側に位置するめしべが内側に湾曲していて、花弁が夕刻に閉じて落下する際にお互いがに触れる構造になっています。更には、種子の表面に凸凹があって靴やタイヤの溝にハマりやすいので、世界中に広まっていったんですね。
ちなみに今回描かれているナナホシテントウはアブラムシを専門に食べるので受粉には関係しません。でも何故かオオイヌノフグリのそばで見かける機会が多いんですよ。
⌘ オオイヌノフグリはどこで咲く?
いわゆる雑草なので日当たり、湿潤の良い場所に多いです。朝は開花しておらず、晴天の昼がベストで夕刻には閉じてしまいます。オオイヌノフグリの咲く場所にはホトケノザ、シロツメ草、カラスノエンドウ、セイヨウタンポポなど春ならではの花々を見ることが出来ると思います。ぜひ春の散策を楽しんでみてください。

小山茂樹 koyama shigeki
1972年生まれ、茅ヶ崎市勤務。県内絶滅種のヤマトオサムシダマシを2009年に茅ヶ崎市内にて再発見し、累代飼育方法を確立した。『月刊むし』『昆虫フィールド』など専門誌に不定期に執筆。

水彩画 / 河野祐子 kono yuko instagram@yukochigasaki