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cafeODARAのつくりかた♪

この地域にクラフト系のクリエイティブな人が多いことが気になって調査していたところひとつの場所にいきあたりました。
そこは2005年に創業したcahe ODARA。店主の飯田さんのほか、椅子や小物を手がけた犬塚さん、今は埼玉で活躍されている野口さん、そして犬塚さんの妻、麻美さんに創業当時のことを教えてもらいました。
cahe ODARAと地域のクラフトの魅力をお伝えします。


〈まんなかの人〉
cafe ODARA
飯田次郎 Jiro Iida
生まれも育ちも茅ヶ崎。鎌倉の「cafe vivement dimanche(カフェ ヴィヴモン ディモンシュ)」や、「銀座カフェーパウリスタ」で勤務の後、2005年に「cafe ODARA」を創業。2011年に直島の「カフェまるや」に勤務、約1年後にまるやの店主と共に茅ヶ崎に戻り営業を再開。
〈ひだりがわの人〉
inu it furniture.
犬塚浩太 Kota Inutsuka
グラフィックデザイナー、アンティーク家具店勤務を経て上松技術専門校を卒業。2000年、茅ヶ崎で家具工房始動。2003年、 野口マサジと創作スペース ロビイをたちあげる。現在は注文家具、修理、店舗内装、住宅リフォームを手がける。■茅ヶ崎市共恵1-11-15 ロビイ茅ヶ崎tel.0467-82-1666
〈みぎの人〉
ノグチ靴工房
野口マサジ Masaji Noguchi
2001年、茅ヶに工房を構え、注文靴と手づくり靴の教室を始動。2003年,
犬塚浩太と創作スペース ロビイをたちあげる。2006年、手づくり靴を生業にする専修コース「WORKS」を開校。2015年、工房を浦和へ移転。■埼玉県さいたま市浦和区岸町4-20-15 sakitcho2F tel.048-822-6771
オリジナルの椅子や机は「イヌイットファニチュア」製

編集部(以下編) テーブルや椅子、オリジナルの家具をつくられたと伺っています。どのような流れで進んでいったのでしょうか。
犬塚浩太(以下犬)「そもそもカフェの椅子とテーブルとはなんぞや」ということからはじまりました。次郎さんの喫茶哲学を伺いながら、どんな椅子が良いのか、また、どんなテーブルが良いのか考えていきました。
飯田(以下飯)いろいろとうるさいことを言いました。
犬 次郎さんがこうありたいという気持ちの部分がはっきりしていたので、デザインうんぬんというよりは、そのイメージを共有していった感じです。
犬塚麻美(以下麻) 次郎さんの当時の年齢で、ブラックウォールナットのテーブルをこれだけの数。家具も全部オーダーなのはなかなかないと思います。
飯 いや、あの、有り物との組み合わせを楽しんでるつもりなんで……。
麻 どこに有り物があるの?(笑)
犬 椅子までオリジナルで作る人は、ほとんどいません(笑)


カフェの椅子として 良いものが作りたい
犬 次郎さんからは、デザインを具体的に指定されたわけではなく「カフェの椅子としていいものが作りたい」というオーダーでした。
何度も作り直して採用された椅子は、座面がお尻の形に削ってあるので長く座ってても疲れにくいです。それと、形に関しては、背もたれによりかかるので、後ろの足が少し短い。デザイン自体は僕が作って試作をして、次郎さんに「こんな感じどう」みたいなお伺いを立てつつ作っていくっていうスタイルでした。
編 先ほど動かした時に思ったのですが、テーブルはものすごく重たいですね。
飯 こういう脚って有り物で似たようなものがいっぱいあるんですけど軽いものばかりで。テーブルがグラグラするのがイヤで重くしてもらいました。
犬 たまたま僕らの同級生がやってる鉄の工場が倉見にあるんです。重たいテーブルの鉄の足はそこにお願いしました。鉄のパーツを使う時はいつもそこに頼んでいます。
唯一無二のドアノブは 「ノグチ靴工房」製

■ 唯一無二のドアノブは 「ノグチ靴工房」製
編 入り口のドアノブは見たことがないデザインです。ドアノブを持たずに、革を持ってスライドして開けますよね。
犬 最初は全く違うシンプルな取っ手の予定だったんです。ある時、次郎さんが「コート掛けの取っ手」を4つ持ってきて、入り口の ドアにつけたいと言いました。「形はいいけど素材が気に入らないから、なんか格好良くできないだろうか」という相談でした。
野口(以下野) その話を受けて、ドアノブを革で包み、ワンポイントで「♪」の刺繍を入れました。
ドアノブはタテに2つ並べて、その間に革の持ち手を渡せば子供でもつかみやすく開けやすいと考え、穴が2つ開いた革のパーツをつくりました。
ピンと張らず、たるみをどのぐらいにしたら開けやすいかを考えて……。
犬 そうそう、みんなで長さを研究した(笑)。あの時は、困った時にアイデア出し合うような流れがあったよね。パーツの幅とか具合とかを変えて何個か作った覚えがある。
野 あの頃、革でなんでも包んじゃうくらい、自分の中で包むことが流行っていて、コッパ(※2)の活動でも石を革でくるんでペーパーウェイトを作ったり。革で包めば何か価値が出るんじゃないかと思ってました。
ポットに付いたふたつの持ち手

犬 カフェオレや紅茶で使う、ホーローのポット。熱いものを入れると持ち手やフタがかなり熱くなるので、野口くんとこでなんとかならないかなって次郎さんから相談がきました。
持ち手のところは、洗う時に外せるように、取り外しが可能なマジックテープでお願いしました。
野 フタの持ち手には靴を作ったときに出る、余ったレザーを使用しています
編 機能と無駄のないデザインで見事にリクエストに応えていますね。フタの持ち手に施したデザインが秀逸でチャーミング。
それにしてもこちらのポット、20年経っているとは思えないほどきれいに扱われています。


スプーンがしっくりと収まる木製のカフェオレソーサー

飯 カフェオレのソーサーは、下北沢にあった「T」というカフェをリスペクトして、スプーンの置き場所のある木製のものを犬塚さんにオーダーしました。
犬 カフェ「T」は私も知っていたので、イメージされていることは、すぐに理解しました。ただ、次郎さんがスプーンの形状にこだわったというのもあり、サンプルをたくさん作ったような気がします(笑)
編 厚みがあって、ソーサーの存在感がありますね。置くときがストンとして気持ち良いです。
犬 サイドの厚みの隙間に、次郎さんの指がギリギリ入るように作りました。安定してしっかりつかむことができるので、置いたり持ち上げたりしやすいのだと思います。
「バーバラアイガン」に 発注した、カフェオダラの オリジナル食器

編 手のひらで包むと心地よい安心感のある、カフェオダラのカフェオレボウル。中を飲み終えると、カップの底に黒の「♪」が現れます。
この器はアメリカの陶芸家、バーバラアイガン(Barbara Eigen)のもの。驚くのはカフェオダラの「♪」マークが、アメリカの工房でひとつひとつ手書きされたオリジナルだということです
飯 バーバラアイガンは、サザンアクセンツ(※3)で取り扱いしていました。オリジナルの話は、カフェオダラをオープンする時にオーナーの上野朝子さんに無理を言ってお願いしました。
カフェオダラではカフェオレボウルに限らずさまざまなメニューにバーバラアイガンの食器が登場します。
この地域にクラフト系のクリエイティブな人が多いのはどうしてなのでしょう
編 そろそろ本題へ入りたいと思います。この地域にクラフト系のクリエイティブな人がなぜこんなに多いのかについて改めて教えてもらえませんか。
麻 確かに集まってきた理由を考えると、やっぱり上野朝子さんがいたからっていうのが大きくあると思います。朝子さんの営むサザンアクセンツには、当時茅ヶ崎や湘南、東京、NYから訪れたクリエイティブな人たちが交わっていたのが大きいような気がします。
また、ロビイという場があったというのも大きいと思います。ホテルのロビーのように、いろんな人が集まるようにと名付けましたが、実際そうなりました。 ロビイの設計上、ノグチ靴工房に行くには、イヌイットファニチュアを通らなければならないので必然的にみなさんとと挨拶したりして仲良くなります。
野 工房に靴を学びにくる人は、実際にその前からクリエイティブな活動をしている人が多いです。
編 ノグチ靴工房は人気があるのはなぜなのでしょうか。
野 靴ってなんかなかなか作るのが想像できないらしくて、一度作ってみたいと思うらしく、クラフト系の人と相性がいいみたいです。
麻 例えば東京からノグチ靴工房に通うようになるとほとんどの人がこっちに引っ越してきちゃうんです。
しばらくたつと、実は帽子作ってるんです、鞄作ってるんですっていう人がどんどんロビイに集まるようになりました。そんななか「コッパ」が始まって。いろんな作り手さんの、余って廃棄しちゃうようなものを使って、もう一回価値を作るという活動ですが、一時期はメディアに取り上げられたりとかなり盛り上がったんです。
この地域に引っ越してきた生徒が、ロビイから卒業しても、この地で店や作家活動を始める人も多いのがクラフト系の人が多い理由のひとつにになっていると思います。
編 そんなロビイはもう22年も継続されていて、今もクラフト人口を伸ばし続けているのですね。
カフェオダラのコーヒーと軽食のおはなし

3年ほど前からコーヒーは飯田さんの焙煎した豆で提供されるようになりました。
「それまでずっと北海道の斉藤珈琲の豆を使っていました。うちはコーヒーをおいしいって言ってもらえているので、それに寄せていくっていう。その一点でやってます」
いさぎよく宣言するところが飯田さん。豆は2種類。「cafeainho(カフェジーニョ)」と「moca flor(モサ・フロー)」どちらも中深煎りで透明感を持ち、絶妙なバランスで保たれた酸味があります。在庫に余裕があれば、豆も購入できるようです。
鎌倉の「cafe vivement dimanche(カフェ ヴィヴモン ディモンシュ)に
5年間在籍した飯田さんは、料理や音楽を含むスタイルに大きな影響を受けたのだそう。
それまで飲み物とスイーツのみだったカフェオダラに軽食の「ケークサレ」が登場したのは、2012年ごろ。
飯田さんは2011年の震災直後に瀬戸内海の直島に渡り「カフェまるや」に勤務しました。1年後には茅ヶ崎に戻ったものの、しばらくはお客さんが戻ってこない時期があったらしくその頃にできたメニューです。
「〈喫茶店の軽食メニューってどんなものなのかな〉ということを考えたら、SHOZOさんのピザトーストが思い浮かんだんです」
「NASU SHOZO CAFE」のピザトーストの味をもとに飯田さんの解釈で広げていったら、なんとケークサレにまとまったのだそう。それに対しては、 「似ても似つかないものになりました」という表現をする飯田さん。
カフェオダラには魔法のようなトッピングがついたケークサレが2種類あります。気になる方はお好きな方を召し上がってみてください。


(※1)ロビイ
2003年に「イヌイットファニチュア」の犬塚浩太と「ノグチ靴工房」の野口マサジが立ち上げた創作スペース(茅ヶ崎市共恵1-11-15)。ホテルのロビーのように人が集う場所になるようにと命名した。帽子・洋服・鞄・靴など多様な作り手が集い、来訪者の交流や創作活動の拠点となり、広がりがうまれる場所となっている。メンバーは入れ替わりつつ継続。都内から通っていた人が茅ヶ崎に移り住む例も少なくない。野口が埼玉に拠点を移した関係で「ノグチ靴工房」のスペースは「ヴィレッジ」に変更された。現在は靴工房の卒業生が受け継ぎ運営している。

(※2) コッパ
余剰や廃棄予定の素材(木材を切った端や革の端切れなど)を「再価値化」するグループ活動「コッパ」を展開(2006年ごろ)。石や木を革で包んでペーパーウェイトにするなど、主にロビイのメンバーが参加した。カフェオダラのドアノブはコッパの「包む」手法をとっている。またメニューカバーには革が使用されているが、一部に革の端切れを使っている。
(※3) サザンアクセンツ
1993年から2008年までラチエン通りと鉄砲道の交差点の北東の一角にあった、上野朝子さんの輸入雑貨店。こちらで扱っていたアメリカの陶芸家 バーバラアイガン(Barbara Eigen)の作品を飯田さんが気に入りカフェオダラの食器をオーダーした。
カメラ:位田明生 ライター:小嶋あずさ
INFORMATION
cafe ODARA
住所 | 茅ヶ崎市東海岸北2-4-50 |
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駐車場 | 「雄三通り」と「鉄炮道」の交差点から「鉄炮道」を辻堂方面へ100mの路地を北に入った右手2件目 |
営業時間 | 12:00〜19:00 |
定休日 | 月・火休(祝日は営業) |