浜竹

動物性食品を使わない、
ヘルシーで彩り鮮やかな「ビーガン」の冷やし中華

　ミニトマト、紫キャベツ、ズッキーニ……真っ白な反り型のラーメン鉢に、カラフルな野菜が麺を埋め尽くさんばかりにこんもりと。この世にもお洒落な冷やし中華の名は「VEGAN HIYACHU（ビーガン冷や中）」。植物性食品のみを使った、ビーガンの冷やし中華だ。

「これまで散々動物を使って料理してきたので、罪滅ぼしじゃないけど、こういう試みも大事かなと。ビーガンは白砂糖もＮＧなので、タレにはメープルシロップを使ってます」

　ここサンクでは「VEGAN醤油」や「VEGAN白湯」など、タレの材料にまで配慮した本格ビーガンラーメンを提供するが、これはあくまでメニューの一つ。塩そばや醤油そばなど一般的なラーメンももちろん楽しめる。湘南とラーメンとビーガンと、そんな組み合わせがあっても面白いんじゃないか。そう閃いて取り入れてみたと、店主の普天間さんは語る。

「野菜と麺とタレを、よーく混ぜて食 べてみてください」 。 アドバイス通りよくかき混ぜていただくと 、ほどよい甘酸っぱさと紅生姜の風味が全体に行き渡り、まごうかたなき冷やし中華の味わいに。辛めに味付けされたビーガンミート（大豆）の香ばしさと、ナッツのカリカリ感がアクセントになって、飽きずにスイスイ食べ進められる。夏場はさっぱりと白ワインといただいてもいいかもしれない。

モチモチなのにツルツル！　
相反する二つを同じベクトルに乗せる

　「VEGAN HIYACHU」　で使用する麺は１００％国産小麦。全粒粉とふすまを加えることで小麦の香りがより楽しめるよう工夫し、何度も試食を重ねた末、コシのある風味豊かな麺が完成した。

　モチモチとした麺はタレとよくからみあい食べ応えも抜群だが、一方喉越しもよく、ツルツルといくらでも入りそうな軽やかさもある。

「『こってりだけどさっぱり』とか『ワイルドだけど繊細』みたいな表現がありますよね。そういうする、全然違うものを同じベクトルに乗せるのが、美味しいものの条件の一つじゃないかと思うんです。料理を作るときは、常にそこを目指すようにしていますね」

成功してもそこで終わらない！　
次々目標を掲げる食の開拓者

　

　普天間さんの経歴はじつに華やかだ。繁盛店をいくつも立ち上げたあと、オーストラリアに飛び、現地でラーメンチェーン店を成功させた。

　また、ラーメン王・石神秀幸氏がラーメン店を束ねて敢行した東日本大震災のボランティアに参加しことがきっかけで、２０１２年から同氏主催のラーメン学校の講師業も務め、ラーメンや店作りに関する知識を惜しげもなく伝授した。昨今の事情により講師業は現在休止になっているが、これを機に以前から憧れだった湘南・茅ヶ崎で、もう一度ラーメン屋をやってみようと決意したという。

　ちなみに普天間さんのラーメン作りは独学で、修行経験は一切ない。「組織でやっていく能力に欠けているんですよ」と普天間さんは笑うが、数々の成功を収めながらそこに安住せず、さらに次を目指す姿は潔いことこの上ない。

 「一つ成し遂げると、またシャッフルしたくなっちゃう。行列ができても店が繁盛しても、お客さんと会話もできずただ作るだけだったりすると、『人生これでいいのか！』って思っちゃうんですよ」

　店名のサンクはフランス語で「５」。普天間さんの５番目の店という意味だが、彼の中ではもうすでに「６」番目が見えているのかもしれない。