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らーめん まつや
堤
どんぶりには哲学が詰まってる
20号のこと
器はどんぶりひとつだけ。スープと麺そして数種の具材。「ラーメン」の構成はとってもシンプル。ひとつ一つ吟味して選び取られたものが掛け合わされた熱〜い一杯は、外気温の低いこの時期には神々しく&恋しくなります。
特集は三ヶ所の店へー。既に完成しているにもかかわらず、もっと適した素材はないかと旅先でも目を光らせ研究を続ける店、時代の流れで材料の仕入れが難しくなっていくなか老舗のこだわりを守り続ける店、職人の感どころを後世に伝える一方、新しい方向にもアンテナを伸ばす店。
ラーメンに限らず店主の話を聞くたびに思うのです。方向性は違えどみな思いや考え、オリジナルの哲学がある。
店は「人」が営んでいます。チーガは店のことを知ってもらったうえで、人や考えも知ってもらえたらいいなと思っています。なぜならチーガはそこに出ている店と距離の近い人たちが手に取ってくれているから。
また来たいな、というのはまた店の人に会いたいな、ということ。チーガをきっかけにまたお気に入りの店をひとつ増やしてもらえますように。
また「チガサキゴトよ、チーガ」では、新しいプロジェクト『オンリーワンを創り出す〈Creates! with Cheeega』〉を、たちあげました。
第一弾は、バレンタインにあわせて「NASCOT DOLLS CHOCOLAT」。茅ヶ崎在住のアーティスト「ナスマサタカ」さんの作品がチョコレートになりました。手がけてくれたのは茅ヶ崎を代表するチョコレートと洋菓子の名店「イル・ド・ショコラ」の山本雅也さん。
茅ヶ崎らしいものってなんだろう、ということを考えながら、これから少しずつ地域のオンリーワンに挑戦していきます。
「きれいごと委員長 川廷昌弘」さん率いる「チガサキのたくらみごと」はBENIRINGOと一緒に相模川の河口へ。このふたりは今後も要注目、確定です。
茅ヶ崎でとれた魚に、塩を加えて発酵させた無添加の旨味調味料『えぼしの雫』。実はネーミングをはじめデザインまわりはチーガが担当しています。
今回はシリーズに登場した新商品、スパイスミックスの『AKA EBOSHI』をどこよりも早くお届けです。
濃厚な鶏ガラと鯖節、
3種の醤油を使った絶品醤油ラーメン
藤沢市に隣接する茅ヶ崎市堤。交通の便がいいとは言えないこの場所に、その味を求めて客が数多訪れる話題のラーメン屋がある。「らーめん まつや」。2011年に開業し、13年目になる茅ヶ崎を代表するラーメン店である。
まずは店で一番人気の醤油ラーメンをいただく。ベースとなるスープは、水30リットルに対し鶏ガラ10キロのほかに丸鳥3羽を使うとあって、鶏の濃厚な風味が存分に楽しめる。かえし(タレ)には丸大豆、二段仕込み、生醤油の3種類を使用し、酒やみりんなどの調味料の他に鯖節を入れるが、鯖節が入ると味が濃く香りが立ち、食べたときの満足感がグッと深まるという。
「鯖節はお蕎麦屋さんで使われることが多いですね。うちのかえしの味はお蕎麦屋さんに近いかもしれません」
と教えてくれたのは、一人で店を切り盛りする店主の松谷さん。特に最後に加えている生醤油は小豆島の丸島醤油のもの。旅先で偶然出会い、香りの良さが気に入って持ち帰って以来使い続けて3年になる。
一つのものにこだわらず、あれこれ試して美味しいと思ったものを柔軟に取り入れ、味をアップデートすることを怠らない。らーめん まつやの強みは、店主の飽くなき探究心なのである。
美しく整えられた麺は
汁の旨味をたっぷり吸うこだわりの自家製麺
まつやといえば、煮干しのエキスがこれでもかと投入された1日10食限定の「煮干しラーメン」も見逃せない。 上品な香りの白煮干と鯖節を使ったスープは、かつて見たことがないセメント色。麺に絡みやすくするためトロミ粉を混ぜているというが、加えて麺自体が水分の少ない低加水麺で、しっかり麺に吸い付いてスープを味わせてくれる。麺をすすれば自然と濃厚な煮干しの出汁が楽しめるというわけだ。
「この味に行き着くには、ずいぶん悩みました。思ったような味が出ず、考え抜いた末に思い切って醤油の分量を減らしたら、煮干しや鯖節が引き立つ味になったんです」
ちなみに、美しく整えて供されまつやの麺はすべて低加水麺で、腰の強い外国産小麦を使って店主自らが作る。 スープに合う麺を求めて業者に頼んだこともあったが、納得がいかず結局自分で作ることにしたのだそう。手間ひまかけた自家製麺もまつやの大きな売りの一つだが、「こだわりというほどでは(笑)」とあっさり。これもまたまつやの魅力の一つかもしれない。
機能的で手入れの行き届いた厨房は
飾らない店主の心意気そのもの
松谷さんの前職はサラリーマン。早期退職を申し出て、大好きなラーメンの店をやろうと都内の有名店で1年ほど働き、ここに店を構えた。木工制作が得意とあって店の内装はすべて手作り。
一見地味に見えるが、機能的で手入れの行き届いた厨房には、手練れの職人ならではの心意気が垣間見える。閉店率も高く、生き馬の目を抜く入れ替わりの激しい業界にあって、13年も店を続けられた秘訣は何か。味や麺へのこだわりや苦労話が語られるかと思いきや、実に松谷さんらしい答えが返ってきた。
「お客様ですね。食べに来てくださるお客様あってこそここまでやってこれた。これ以外ないですね」
飾らなさに秘められた店主の熱い思いを食して、寒い冬を熱々ラーメンでぜひ乗り切っていただきたい。
INFORMATION
らーめん まつや
住所 | 神奈川県茅ヶ崎市堤73-5 |
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駐車場 | Pなし |
TEL | なし |
営業時間 | ランチ:11:00〜14:00(L.O.13:50) ディナー:17:00〜20:00(L.O.19:50) |
定休日 | 不定休 |
URL | まつやTwitter |