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赤羽根山から藍を叫ぶ
ちがさき藍プロジェクト
せっかく農家になったんだもの、憧れの藍と丁寧につきあってみよう。タネから茶葉、染めまで、自分の手を通してじっくり味わう企みです。
第六話〈最終回〉
藍する人よ、幸あれ
今年。四年ぶりに浜降祭が復活する。
今年。ようやくにして茅ヶ崎で育てた藍で染める夢が叶った。二つの慶事に心が躍る。自前の藍染め第一号は祭り帯に決めた。昨年の種まきから延々十五か月。待ちに待った藍プロのメンバーたちも次々と集まり、思い思いの素材を染めてくれた。このシーンだけを切り取れば「藍染め体験」と言うのだろうが、みんなの胸にはどれだけの思い出が詰まっているだろう、それだけでは言い表せないものがあるはずだ。
炎天下の収穫作業も、木枯らしの中での蒅(すくも)の仕込みも、みんなで経験した大切なストーリー。染め液の中に布をくぐらせながら感慨に浸るそのひとときが本当に尊いと思う。
茅ヶ崎どっこいファームではたまたま「藍プロ」と名付けただけであって「藍する人」がこれからも増えていってほしい。
私がつくづく思うことは、それほど遠くない時代まで藍を食し藍をまとうことは誰もがしていた。布を織り藍に染め野良に出て汗することは村々の日常だった。それをすっかり忘れて藍を何か高級な特別なものに押し込んでしまっていることが残念でならない。
だからここらで藍を楽しみ直そう。味噌だってドブロクだって自分で作れるじゃないの。
藍染めもおんなじ。拙くてもいいじゃない、楽しんでそして真剣に遊びましょうよ。
茅ヶ崎にはただただ晴れやかな、そんな青が似合うと思うなあ。
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吉野正人 Yoshino Masato
茅ケ崎どっこいファーム主宰。教員生活を経て2018年より就農。赤羽根の自然の循環の中でオーガニック野菜を手がける一方、「おいしいと楽しいをつなげたい」をモットーに「農あるくらし」について様々なライフスタイルを提言。