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宮治淳一のワンス・アポン・ア・タイム・イン・チガサキ
其の十一
茅ヶ崎南口駅前のなつかしい光景からまた一つ、名店退場の知らせ
私が好きな日本映画の一つに山田洋次監督の初期作品『なつかしい風来坊』がある。ハナ肇と倍賞千恵子主演で昭和41年に公開された。ストーリーもさることながら舞台が茅ヶ崎というのがいい。冒頭湘南電車と茅ヶ崎駅舎が映し出される。あのなつかしい木造の小さな駅舎。昭和50年代終わりまで現役だったこれぞ昭和の建築物。小学校の6年間毎日その駅舎の前を通り茅ヶ崎小学校に通った。今でも目蓋を閉じるとその頃の南口駅前の光景が蘇る。
駅を背に左に万年塀に囲まれた「マッコール洋裁学院」と当時でも珍しかった「輪タク」、その並びにシックな喫茶店「ジャマイカ」そして「茅ヶ崎フードセンター」のビル、「京雅堂骨董店」、小さいが抜群のお美味しさを誇ったラーメン店「都亭」、私がオルガンを習っていた「長谷川楽器店」があり、道を挟んで今でも現役の「皆川酒店」その西隣に「栗本書店」、ここで生まれて初めて『ニュー・ミュージック・マガジン』を買った。そしてその南側は「丸十ベーカリー」、パセリがちょこっと乗ったハム・サンドウィッチをもう一度食てみたい。
駅の正面、現在バスロータリーになっているところに島のような一角があって喫茶店「園」と「白十字」、その西側には「越前そば」「こまきや」「林時計店」、近くには誕生日にしか縁がなかった、惜しくも20年くらい前に閉店した茅ヶ崎の洋菓子店のエース的存在「サフラン」。そういえば和菓子の老舗「釜成屋」も駅前に店を出していたと思う。これら茅ヶ崎の名店を撮った写真が現存するなら、もう一度あの風景に浸りたい。
大学生のころ待ち合わせでよく使っていた南口駅前の喫茶店「チェス」が5月末に閉まるというニュースが飛び込んできた。また一つ南口の名店が退場し、街並みは変わっていく・・・
映画『なつかしい風来坊』が公開された昭和41年にヒットした女性歌手による素晴らしい楽曲
宮治淳一 Jyunichi Miyaji
1955年茅ヶ崎市生まれ。ラジオDJ、音楽プロデューサー。現在ワーナーミュージック・ジャパンで洋楽編成を担当。「ミュージック・ライブラリー&カフェ ブランディン」を経営する傍ら、ラジオ日本「宮治淳一のラジオ名盤アワー」( 毎週日曜 17:55〜 18:55)、湘南マジックウェイブ「宮治淳一のアワ・ヒット・パレード」(土曜 13:00〜14:00)のラジオDJを担当。サザンの名付け親。「ミュージックシティ・茅ヶ崎」を構想中…。
『茅ヶ崎物語〜MY LITTLE HOMETOWN〜』
(ライブ・ビューイング・ジャパン)書籍
『MY LITTLE HOMETOWN 茅ヶ崎音楽物語』(ポプラ社)
DVD
『茅ヶ崎物語〜MY LITTLE HOMETOWN〜』
(ライブ・ビューイング・ジャパン)
BRANDIN(ブランディン)
宮治夫妻が1999年にオープンしたミュージック・ライブラリー&カフェ。コーヒーを楽しみながら60〜70年代のポップ・ロックを中心としたアナログLP約1万枚を自由に聴くことができるほか、いまとなっては希少なジュークボックスでの音楽再生も可能。
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富士見町1-2
☎️0467-85-3818
水、木休 13:00〜18:00 (不定休あり)
http://brandin.cafe/