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川廷昌弘さんと語り合う チガサキのたくらみごと

“きれいごと”で茅ヶ崎はもっと面白くなる!?
かわていさんと語り合うチガサキのたくらみごと

vol.23 SDGsが主流化した日本で、私たちはどう生きていけばいいんだろう?

川廷さんの歩み  
1986年博報堂に入社以来37年間、テレビ番組「情熱大陸」などの立ち上げに関わった後、国連における環境3大テーマ(気候変動、生物多様性、森林保全)からSDGsまで、国家規模・地球規模の錚々たるプロジェクトを手掛けてきました。環境省「チーム・マイナス6%(2005年)」、林野庁「フォレスト・サポーターズ(2008年)」、資源エネルギー庁「グリーンパワープロジェクト(2014年)」、復興庁「東北グリーン復興事業者パートナーシップ(2014年)」等のプロデュース、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10、2010年)や国連総会「SDGsサミット(2019年)」サイドイベントでのスピーチで活躍する一方、日本写真家協会会員として個展開催や写真集出版を行う等、「暮らしと国際会議をつなぐ」「国民運動で世論形成と行動変容」「地域の自然を守り産業を創発する」の3本柱で活躍。2022年、筑波大学大学院後期博士課程修了。2023年6月末で博報堂を定年退職し、写真家としての活動に主軸を置くことを宣言しています。

「きれいごとで勝負!」を合言葉に、お届けしてきた連載「チガサキのたくらみごと」。〈きれいごと〉と揶揄されるような行動を褒め称える文化をつくろうと、 川廷昌弘さんとともに取り組んできました。川廷さんといえば、世界を股にかけて活躍するSDGsコミュニケーションの第一人者。定年退職という大きな区切りとなった今回は、改めて連載を振り返り、今後を展望することにしました。

左から、 カメラ: 奥田正治 、 編集・デザイン: 小嶋あずさ 、 きれいごと委員長: 川廷昌弘 、 ライター:池田美砂子

SDGsは主流化した。さて次のステップは?

嶋:改めて川廷さん、定年退職おめでとうございます!きれいごと委員長の節目は「たくらみごと」の節目でもありますので、今回はいつもこのコーナーを作ってるメンバーで今までを振り返ってみたいと思います。

川廷:これまで、茅ヶ崎で活動されている多様な22組のみなさんにご登場いただきましたが、それぞれに躍進されていますね。新しいプロジェクトを始めた人、活動の幅を大きく広げて進化させている人、茅ヶ崎市議会議員になった人も。中でも象徴的なのはBRANDINの宮治淳一さんだと思います。2年前に登場いただき「ミュージックシティ茅ヶ崎」構想の一環として「茅ヶ崎にコミュニティFM局をつくる」という夢を語ってくださいましたよね。それが間も無く10月に現実になりますね。

池田:茅ヶ崎FMの開局は、当時話を聞いていた私たちだけではなく、茅ヶ崎市民みんなにとって大きな喜びですね。

川廷:みんなそれぞれにやりたいことを実現して幸せに生きていて、茅ヶ崎にはそれを語り合える仲間がたくさんいます。きっと幸せを感じている人が他のまちよりも多いんじゃないかと思います。みんなが自分らしく生きることが、誰かのためにもなっている。この連載を通して見えてきたことは、SDGsの本質そのものですね。

池田:連載の最初の頃は、その人の取り組みがSDGs17のゴールの何番につながるか語り合いましたが、最近は触れませんね。

川廷:必ずしもSDGsにつなげなくても良いかなと。みんなの課題認識や行動がSDGsそのものであれば。

小嶋:読者にはSDGsの初心者もいるので、改めてSDGsについての基礎と現状のことを教えていただけますか。

川廷:復習すると、SDGsは、2030年までに持続可能な社会を実現するために世界が合意し国連総会で採択された国際的な目標です。社会、環境、経済の3つの側面が含まれた17の目標で構成されています。Cheeegaが創刊した2019年12月からこの3年半ほどで、SDGsが主流化したことは確かで、日本人の誰もが「知っている」というところまできました。数字で見ると、日本はSDGsの認知調査で20カ国中ナンバーワンなんです。一方で「SDGsを詳しく話せますか?」と聞くと、日本は世界でワーストワンです。

小嶋:ワーストワン?   その原因は何でしょう。

川廷:原因のひとつは、私が携わったSDGsアイコンの日本語化のコンセプトにあります。SDGsが私たちの暮らしにつながっていることが伝わるように分かりやすい言葉で表現したので、主流化させるためのツールだったとも言えます。そういう意味では大成功なんですが、「認知は上がっているのに世の中ちっともSDGsのゴールに近づいていない」という批判もあります。みんなが知っている状態になった。じゃあここから何をしたらいい?  というのが、今の宿題なんですよね。

「なぜSDGsをやろうと思ったのか」一人ひとりのWhyが大切

小嶋:その宿題の最先端の答えは?

川廷:まず※ 17のゴール(What)がわかったら169のターゲットの中で自分の関心のある部分を読んでみて行動にもつなげる(How)ことです。でも、本当にこれから大事になってくるのは、一人ひとりが「なぜSDGsをやろうと思ったのか」というWhyを伝えること。「世の中みんながやっているから」ではなく、自分がなぜやっているかを語ってほしいですね。

小嶋:そう言われてみるとドキッとしますね。

川廷:私自身は、SDGsに取り組む動機がはっきりしているんです。阪神大震災での被災経験もありますし、広告会社では生活者や社会を幸せにすることを仕事としてやってきた。つまり自己実現としてSDGsに取り組んでいます。それが、自分の人生も豊かにしてくれて、生きていて気持ちいい、楽しい。さらに結果として社会につながって自分にも還ってくる。「川廷さんの講演を聞いて自分もこういうことをやってみました」って言ってくれる人も多いですし、世のため人のためになっているという実感があるから、続けていけるんです。

小嶋:だから川廷さんの言葉には説得力があるんですね。

川廷そうやって一人ひとりが動機を持ち、伝えること。社会を変えていくにはエネルギーが必要で、「みんながやってるから」というだけでは伝わらないんです。国連の「持続可能な開発」について、僕なりに「将来の世代の欲求を満たすため、現在の世代は欲求を満たしつつ、将来の世代への責任も果たすこと」と意訳していますが、我々がただ幸せを享受するだけではダメなんですよね。未来世代への責任を果たさないと。

奥田:でも国の施策を見ると、大きな流れは変わらないですね。世界的に脱炭素の方向に向かっているのに、いまだに石炭火力発電を活用する方針を変えていません。

川廷:そうですよね。でも、僕は18年前から「※チーム・マイナス6%」というキャンペーンに携わってきましたが、一人ひとりの主体的な行動によってみんなの意識は確実に変わってきていると感じています。だからやっぱり人間を信じるべきだと思っているんです。

実はこのメンバー…「まちを良くしよう」なんて思っていません!

奥田:僕個人にとってのWhyは、なんとなくぼんやりと持っていた倫理観にあります。それをSDGsが明確に提示してくれたと思っているんです。

川廷:いいですね。一方で多様性の時代だからそういう倫理観を持っていない人もいてもいい。流石に犯罪は絶対ダメですが、そうでない範囲の多様な価値観を否定せず、どんな動機でも火がついたらOKだと思っています。

池田:私は自分が生きやすくなるためですね。人間が地球環境にとって悪でしかないとずっと思っていて、生きづらく感じていて。SDGsに「人が社会をより良くできる」という希望を感じて、取材して記事を書くようになりました。

川廷:池田さんの場合は完全に自分ごとであり、自己実現ですね。自分がより良く生きようとして書いた記事が、それを読んだ人への影響力になっています。

小嶋:私は「Cheeegaを通してまちを良くしよう」とはさらさら思っていなくって。自分のスキルを活かして仕事を作りたかったんです。でも続けてきて、自分がやらなきゃいけないことが見えてきました。

川廷:自分がやりたいと思って始めたことに、周りの期待が重なってきて、責任が発生したんですね。そして着実に成長している。SDGsって、人間開発(Human Development)なんですよ。一人ひとりが、誰もが可能性や才能を発揮できる安心安全な社会をつくる人材になって、社会に好循環を生み出す。小嶋さんはCheeegaを通してそれをやっているんですね。

池田:このメンバーもそれぞれにWhyがありますが、それが茅ヶ崎のまちの良い循環につながっているのなら嬉しいですね。

川廷:SDGsのキーワード「誰一人取り残さない」って、自分も含めてですから。茅ヶ崎のため、社会のため、地球のためはもちろん大切ですが、自分が満たされることを大切にしましょう。自分の行動で周りに良い影響が発揮できたら幸せですよね。僕はこれまでの経験でそこに思い至りました。

小嶋:最後に、これから川廷さんがやりたいことを−

川廷:これからは写真家として生きていきます。ガラリと生き方を変えると言うよりは、企業で働きながら写真家をしてきたこれまでから、写真家を軸足にして企業や自治体の支援業務をする。それによってより深くSDGsを伝えられるように自己成長を目指していきます。この連載も茅ヶ崎のみんなに良い影響を与えられるように続けていきましょう。


※SDGsの17のゴール・169のターゲット

国連が定めた17のゴールにはそれぞれ5〜20ほどのターゲット(具体的な目標、合計169)が定められていてます。茅ヶ崎市では川廷さんのアドバイスのもと、市の総合計画に基づいた「ちがさきSDGsターゲット」を定めています。

チーム・マイナス6%

2005年に始まった環境省主導の温暖化防止コミュニケーションプロジェクト。川廷さんは博報堂社員としてメディアコンテンツ統括に携わり、スポーツ界から温暖化ストップのアクションを伝えるなど国民の意識と行動に大きな影響を与えました。


川廷さんの写真展 開催

ひと夏のフォトギャラリーTo the Beach
9/3 日 まで

川廷さんのトークイベント開催
8/19(土)15:00 – 16:30
参加費1,000円(ドリンク付)
〈お申し込み〉
下記「ファーマーズテーブル たさき」まで来店もしくは電話(営業時間内)。または下記へメールくださいinfo@cheeega.xsrv.jp

ファーマーズテーブル たさき 

茅ヶ崎市東海岸北2-4-46 田崎ビル 1F
火-土曜   11:00 – 15:00(L.O. 14:00)
日曜     12:00 – 15:00(L.O. 14:00)
★ディナータイムはテイクアウトのみ
17:00- 19:00(お渡しは19:30まで)
tel. 0467-57-5256 月休 P3台 


かわていさん

きれいごと委員長
かわていさん

博報堂にて37年間、国連における環境3大テーマ(気候変動、生物多様性、森林保全)からSDGsまで、国家規模、地球規模の錚々たるプロジェクトを手がけてきた。2023年に定年退職後は、日本写真家協会の写真家として活躍中。

かわていさん

SDGsは、2030年までに持続可能な社会を実現するために世界が合意した国際的な目標。2015年9月の国連総会で採択された。「貧困の撲滅」から「パートナーシップ」まで、社会、環境、経済の3つの側面が含まれた17の目標で構成されている。SDGs自体を目的化せず、コミュニケーションツールとして使いこなすことがポイント。


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