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チガサキゴトよ、チーガ

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あずみ虫のアラスカ日記

その1 コククジラ

 春になると毎年、灰色の身体に白い模様のコククジラ(グレイホエール)の群れが、南東アラスカ・シトカの海にやってきます。彼らの目的は昆布などに産みつけられたニシンの卵。南東アラスカに無数に点在する島々を巡り、ニシンの卵を採食するコククジラの姿を、シトカの海岸からも目にすることができます。

 この時期、私は毎日のようにカヤックに乗って海に出ます。陸から近い小島のまわりを漕いでいると、コククジラに出会えるからです。

  「ブシュー、ブシュー」という潮を吹く、独特の音が聴こえてくると、私はワクワクしながら辺りを見まわします。すると間もなく、体長12メートルほどのコククジラの背中が海面に現れます。

 彼らは2〜3頭の群れをつくり、ゆっくりと大きく円を描くように泳ぎまわり、ニシンの卵を食べています。

 巨大なクジラはあっという間に遠くに離れたり、そうかと思うと突然すぐ近くに現れたり、彼らが水中に潜ると、次にどこに姿を現すのか検討がつきません。私はパドルを漕ぐ手を止め、静かに観察しました。

 すると、いきなり私のカヤックがぐらりと大きく揺れて、真下に大きな背中が現れたのです。なんと私はカヤックごと、クジラの背中の上に乗ってしまいました。

 幸い私のカヤックは空気を入れるタイプのゴムボートのような素材で、クジラの背中に柔らかくフィットしたおかげで、カヤックが転倒することや、クジラの身体を傷つけることを免れました。そして、彼は何事もなかったかのように、ゆっくりと水中に潜ってゆきました。

 驚きつつも、カヤックのゴムの布越しにコククジラの背中の丸みを感じて、胸が震えました。


あずみ虫
絵本作家、イラストレーター。2018年よりアラスカに通いはじめ、現在はアラスカと日本を行き来しながら作品を制作。絵本は『ホッキョクグマのプック』、『アザラシのアニュー』ほか

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