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チガサキゴトよ、チーガ

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ずっと茅ヶ崎で暮らしたい

親が転倒、「介護」と出会う

 一人暮らしの母が、転倒した。腰椎圧迫骨折。激痛と闘う日々が3ヶ月ほど続いた。幸い順調に回復し、1年経った今は元気に暮らしているが、転倒前に比べて体力が衰えたのは言うまでもない。
 このまま一人暮らしを続けさせて大丈夫なのか? ウチのそばに呼び寄せたほうがいいんじゃないか? しかし80代半ばで住処を変えるのはどうなんだ? 環境を変えると認知症のリスクが高まるというし、住み慣れた場所を離れるのはやっぱり抵抗があるだろうし……。
「ううん、そうでもない。茅ヶ崎、いいと思う。海の見える老人ホームって何となくかっこいいし(母)」
 茅ヶ崎に海の見える老人ホームがあるかどうかわからないが、どうやらこっちに来るのもあながちイヤではないらしい。というわけで、まず手始めに、地元の地域包括支援センターを訪ねてみることにした。
 ご存知の方も多いと思うが、地域包括支援センターは高齢者の困り事全般に関するサポートを行っている。介護だけでなく、引きこもりの子どもがいて困っているなど家族関連の相談を糸口に支援に入ることもある。私のように「高齢の親を引き取りたいと思っているんだけど」というやや漠然とした悩みにも快く応じてくれた。
「腰椎骨折ですか。大変でしたね。ということは入院されたのですね」
「いえいえ、入院せず2ヶ月間老健(介護老人保険施設)に入って、リハビリと通院で回復を待ちました」
「え!入院されなかったんですか。それはすごい。腰椎骨折の場合、入院される方が多いんですけどね」
 すっかり元通りというわけにはいかないけれど、とりあえず元気になって、一度やめた英会話教室に再び通い始めたことを話すと、ベテランらしき女性相談員さんは「いいですね、本当によい選択をされたと思います」と相好を崩して褒めてくれた。
 実を言うと、老人ホームで働く知人からも似たようなことを言われた。入院せずに治したのはすごい。そこで寝たきりになってしまう人もいる。運がいいのもあるだろうけど、本人の意志の力だねと。なるほど、そうか、そういうもんか。医者から「入院したら寝たきりになるかも」と脅されて、そらアカンと入院でなく老健を選んだのだったが、それは運のいいこと、いや、寝たきりになんかなりたくないという母の執念、矜持のなせる技だったのかもしれない。
「でも、85もすぎて住まいを変えるのはよくないんでしょうか? 認知症とか、大丈夫ですかね?」
「うーん、それは人によると思います。お母様のようにアクティブで好奇心のある方なら問題ないかもしれませんし。まだ85歳ですから、こちらにいらっしゃるにしても、元気なうちは自立されていたほうがいいかもしれませんね」
 アクティブで好奇心旺盛か。もともと人見知りで大人しくて、どっちかというと暗くて内気な人だと思ってたんだけど、いつの間にそんな活動的な人になったんだろう。いや、家族とはいえずっと別々に暮らしてきたんだから、わかったような気になるのは浅はかってもんか。
 そういえば、骨折が治ったら北欧に行きたいとか言ってたな。でも、やっぱりしばらくは無理だろうから、まずは埼玉にあるムーミンパーク、行ってみますか、ねえ、お母さん。


藤原千尋
ふじわらちひろ/1967年東京生まれ、2006年より茅ヶ崎市松が丘在住/出版社勤務を経て単行本ライター。ビジネス、教育、社会貢献、生き方老い方など幅広いジャンルの企画とライティングを手がける。

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