NEW
中国料理 信考(シンカオ)
共恵
見た目からしてもう絶品!
深く美しい味わいに、口福が止まらない
絹のきらめきを纏った春雨に、ほのかな桃色に染まったふっくらとしたエビ。差し出された料理を見た瞬間、その美しさに思わず目を奪われた。食わずもがなの絶品オーラを放つこの一皿、一体なんという名の料理?
「エビとメンマと春雨の塩炒め、ですね。もともと僕が賄いで作っていた料理で、特別なものじゃありません。至ってシンプルな料理だけど、春雨がスープの味をうまく吸って、『食べるスープ』みたいな感じで召し上がっていただけると思います」
「信考」の店主・宮崎信考さんの繰り出す中華は、しかし決して〈単純〉ではない。例えば、エビに負けず劣らずの存在感を放つビッグサイズのメンマ。中国の家庭では炒め物などによく使うが、このサイズ感は日本では滅多にお目にかかれない。隠し味に使うという白い魚介エキスも、しつこくなりすぎない味を演出する宮崎さんならではの工夫である。
「全体的に白く仕上げたいので、オイスターソースではなく帆立やカニのエキスが調合されたものを使い、エビもあまり色がつかないよう低温かつ短時間で火を通します」
ほどよく火の入ったプリップリのエビに、食べごたえ抜群のビッグメンマ、すべての旨味を吸い上げた「食べるスープ」のような春雨。食べるほどに後引くこの味の虜にならない人は、おそらくいない。
「押し豆腐」に「クラゲの頭」。
信考オリジナルを生み出すちょっと変わった食材たち
ユニークな食材を取り入れた料理は他にもある。例えば、日本では珍しい紐状の押し豆腐を使った「細切り押し豆腐とパクチー花椒オイルのサラダ」。歯応えのある麺のような豆腐に、微かな痺れを伴う花椒油を加えたドレッシングがよく絡み、さっぱりした食感を楽しめる前菜サラダに仕上がっている。
また、「クラゲの頭ときゅうりとニンニク正油和え」では、ヒダと食感の強さが特徴の〈クラゲの頭〉と呼ばれる傘に近い足の部分を使う。
「細切りのクラゲだと、あらかじめしっかり味をつけておかないと味が絡まない。でも、そうすると食感がグニャッとしてしまう。コリっとしたクラゲ本来の歯切れを楽しむには、味の絡みやすい〈クラゲの頭〉が一番なんです」
そして極め付けは「牡蠣の麻婆豆腐」。麻婆特有の辛味や痺れとともに、牡蠣の濃厚な風味とクリーミーな食感を楽しめる一品だが、じつは隠し味として調味して細かく刻んだ牛すじが入っている。牛すじのゼラチン質が、濃厚な旨味にさらにとろみとコクを与えてくれるのだ。
本場中国の料理人をも
納得させた、
凄腕さすらいの料理人
「信考」が茅ヶ崎にオープンしたのは6年前。駅から徒歩5分と便利な立地にあるが、細い階段を上がった2階にあるせいか、その雰囲気は隠れ家的。喧騒と一線を置く佇まいは、宮崎さん本人と重なるようにも見えるが、かつて宮崎さんは中華のチェーン店の立ち上げに関わったり、先輩の店の新規オープンに奔走するなど、バックパッカーのように全国を駆けずり回っていたという。
杏仁豆腐400円。上品で滑らかながら、もっちりとして食べごたえのある一品。同じ値段のゴマプリンもおすすめ。
豆腐、牛すじ、豚のひき肉に続いて、調味料や片栗粉を鍋に投入。豚のひき肉も牛すじ同様、あらかじめ味をつけてカラカラに炒めたものを使う。
「中国の料理人たちをまとめなくちゃいけない時もあったんですけど、みんな料理の腕がダメだと相手にもしないから、必死に腕を磨きましたね。でも、おかげで彼らと交流が生まれて、食材や技術についても随分教わりました。それが今の店のメニューに生きているかもしれません」
これほどの腕と店舗を回す才覚があるなら、もっと店を大きくすることもできるのでは? と尋ねると、宮崎さんは静かに微笑んで首を振った。「一人でやり切れるくらいが、今の僕にはちょうどいいんです」。
さすらいの料理人の凄味は、当分はここ茅ヶ崎・共恵でしか食べられそうにない。
宮崎信考さん
INFORMATION
中国料理 信考(シンカオ)
住所 | 共恵1-6-13 |
---|---|
駐車場 | Pなし |
TEL | 0467-88-5678 |
営業時間 | 11:00~14:00(L.O.) 17:00~22:00(L.O.) |
定休日 | 水曜、第4木曜 休 |
URL | http://xinkao.jp |