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チガサキゴトよ、チーガ

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ずっと茅ヶ崎で暮らしたい

アロハの似合う婆さんになりたい

ずっと茅ヶ崎

 昔はよく、柄物を着ていた。

 花柄、動物柄、幾何学模様。似合うかどうかなんて考えない、好きだから、気に入ったから着てみたい。にぎやかな服を身につけて、ちょっと気分を上げたいというのもあったのかもしれない。

 だけど、ここ数年はモノトーンばかり。すっかり柄物を着なくなったし、服で気分がどうこういうのもなくなった。年相応にきちんと見えるもの、自分に似合うものを着ようと思うようになった。

 きっかけは、ある年配女性の一言だ。年をとったらシンプルな無地に限る。柄物は萎れた自分を際立たせるだけ。その言葉に、その時はウンウン納得した。

 でも最近、ちょっと気が変わった。 にぎやかで派手なの、やっぱ惹かれるわぁと思い直しつつある。発端は、茅ヶ崎市美術館の「アロハ展」で目にしたヴィンテージアロハだ。

 特に心を掴まれたのが、粋でいなせな和柄のアロハ。逆巻く波を眼下に見下ろす鷹、水しぶきを上げて滝登りする鯉、様々な威嚇の表情を見せる百虎。他にもお城、お祭り、宝船、初夢に見ると縁起がいいという「富士・鷹・茄子」なんていうのまであった。

 アロハは日本人移民が持ち込んだ着物がシャツとして生まれ変わったという説もあるというが、信憑性はあまり高くないのこと。でも、そう思いたくなるのもよくわかる。和服の柄が洋装のシャツに転じたと見たくなるくらい、レーヨン素材のシャツと大胆な和柄は相性抜群に見える。

 それにしても、アロハの和柄はどれも威勢がいい。虎、竜、お祭りなどがモチーフに使われているせいか、活力にあふれ、どこか陽気で朗らかでもある。見ているだけで気分が上がるというか、暗い世相を吹っ飛ばしてくれそうな景気のよさがある、というか。こういう元気をくれるような明るさ朗らかさも、日本文化の特徴じゃないかという気がする。

 ちなみに、アロハシャツが広まったのは1930年代、当初はトロピカル柄はなく和柄が主流で、最も古く「アロハシャツ」の表記を用いたのは日系人の経営するムサシヤというお店なんだとか。

 ついでにいうと、日本とハワイの繋がりの始まりは今を遡ること江戸時代。海外からもたらされた疫病のせいでハワイの人口が減ったため、時のハワイ政府はサトウキビ生産の労働者を求めて江戸幕府に交渉を開始。その後明治元年からハワイへの移民がスタートし、1920年代から戦前にかけては、ハワイの人口のなんと4割を日系人が占めたこともあったのだそう。

 治安が良くて買い物も美味しいものも気軽に楽しめるなどハワイは日本でも人気が高いが、その背景には、じつは歴史的な深い繋がりがある、ということなのかもしれない。

 というわけで、来年からはシンプル転じて柄もの復活。年齢も、似合うかどうかもさておいて、景気のいい和柄アロハを着てみよう。

 「ド派手なアロハなんか、とても街中を着て歩けない」とも思ったけれど、それなら外を出歩かなければいい話。ステイホームのご時世なんだから、自宅の仕事着として楽しめばいいのだ。

 「萎れた自分を際立たせるだけ」になっちゃうかもだけど、そもそもモノトーンの似合うスタイリッシュなご婦人より、アロハの似合うチャラい婆さんを目指すほうが、自分らしいかな、なんて思ったりして。

参考資料『ヴィンテージアロハの魅力』(発行:茅ヶ崎市・文化スポーツ振興財団 茅ヶ崎市美術館)


藤原千尋
ふじわらちひろ/1967年東京生まれ、2006年より茅ヶ崎市松が丘在住/出版社勤務を経て単行本ライター。ビジネス、教育、社会貢献、生き方老い方など幅広いジャンルの企画とライティングを手がける。

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