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チガサキゴトよ、チーガ

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川廷昌弘さんと語り合う チガサキのたくらみごと

“ き れ い ご と ” で 茅 ヶ 崎 は も っ と 面 白 く な る!?
かわていさんと語り合うチガサキのたくらみごと

vol.10 BRANDIN Music Library & Cafe
宮治淳一さん・ひろみさん

「ミュージックシティ・茅ヶ崎」構想それは“根も葉もあるたくらみごと”。理念とスピリットのあるまちづくりを。

 茅ヶ崎まちで次々に沸き起こっている、たくらみごと。 ”きれいごと“を堂々と語り、未来のために自らの意志で行動する方々をゲストにお迎えする本コーナーも、今回で10回目となりました。       

 なぜこんなにも多くのたくらみごとが、自然発生し続けるのか。その謎を解き明かすため、今回は茅ヶ崎で生まれ育ち、映画『茅ヶ崎物語』や書籍『MY LITTLE TOWN 茅ヶ崎音楽物語』を通してまちに根付く音楽文化を発信してきた宮治淳一さんを訪ねました。        

 桑田佳祐さんと小学校時代からの盟友であり、サザンオールスターズの名付け親でもある宮治さん。1999年に妻のひろみさんとともに立ち上げたミュージック・ライブラリー&カフェ『BRANDIN』で語った、茅ヶ崎にとって ”根も葉もあるたくらみごと“とはー

音楽好きが集まる場所がない。
だったら、つくろう。

宮治淳一。1955年茅ヶ崎市生まれ。音楽評論家、DJ、音楽プロモーター。小学生時代にビートルズ、ヴェンチャーズなど英米のロックンロールにハマり音楽を志す。ディスコメイト・レコード、パイオニアLDCを経て1995年よりワーナーミュージック・ジャパンで洋楽編成を担当。「ブランディン」を経営する傍ら、ラジオ日本「宮治淳一のラジオ名盤アワー」(日曜17:55〜18:55)、湘南マジックウェイブ「宮治淳一のアワ・ヒット・パレード」(土曜13:00〜14:00、日曜21:00〜22:00[再放送])にレギュラー出演中。




か:お会いできて光栄です。今日は宮治さんの大事にされていることをお聞きしたいと思っています。茅ヶ崎で生まれ育った人も移住者も一緒にたくらみを共有できたら、まちがより良いかたちで未来につながっていくのではないかと思っているのですが、このお店はまさに、宮治さんのたくらみごとですよね。

宮:ここをつくったのは、茅ヶ崎に音楽が好きな人が集まる場がなかったからなんです。音楽という共通項を持った ”同好の士“が集まれば、何かが始まるんじゃないかと思って。

か:これだけ音楽があふれているまちなのに、不思議ですね。

宮:そうですよね。僕はたまたまレコードをたくさん持っていて、たまたまここが売りに出ていたので、一念発起してこの店を開きました。誰もやったことのないことをやるのが好きなんです。

か:「自分の行きたい場所がない、だったら自分でつくろう」というのは最高の動機ですよね。実際にどんな事が起こっていますか?

宮:お客さんが「これ、なんて曲ですか?」と聞くと別のお客さんが教えたり、音楽という同じ興味があるだけで、会ったばかりの人でも意気投合していたりします。そういう場面を見るとやっていてよかったな、と思いますね。京都や茨城など遠方から来てくれる人もいます。こういう場所は、あるようでなかったんですね。

か:レコードが流れる空間、いいですよね。ジュークボックスの音も、奥行きがあって感動しました。音楽好きにはたまらない場所ですね!

茅ヶ崎の敷居の低さの理由は、
まちの歴史と風土にあり。

宮:ただ、よく「お店に入りづらい」って言われてしまうんですよ。茅ヶ崎のまちと同じように、どんな人でも入って来られる敷居の低い店にしているつもりなんですけど ね。

か:敷居の低さは、茅ヶ崎の大きな魅力ですよね。どうしてなんでしょう。

宮:ご存知の通り茅ヶ崎は鎌倉や京都とは違って若いまちですよね。特に南側は戦後に開発された土地で、それ以前は“砂と松と芋”しかなかったんです。強風で人が住めるような場所ではなかった。

か:防砂林がまだ低かったんですよね。

宮:そうそう、一中(茅ヶ崎市立第一中学校)なんて、砂が窓から吹き込んで休校になったことがあると聞いています。そんなところに家なんか建ちっこないですよね(笑)。私の生家は東海岸北で、父親が昭和29年に建てたんですが、それより前は畑で誰も住んだことのない土地でした。僕が生まれた頃の茅ヶ崎は人口6万人ほどの小都市でしたが、小学生の頃は夏休みが終わると必ず転校生がいて、クラス数もどんどん増えていきました。そんなまちですから、僕はたまたまここで生まれましたけど、一週間前に住み始めた人と大差はない。早いか遅いかだけの違いだと思っています。

か:そう言っていただけると、僕ら移住者としてはホッとします。

宮:いや、本当にそうですよ。茅ヶ崎の文化も芸能も土着のものではなく、輸入してきたものがそこで育ったんです。海岸まで何もない土地柄や別荘文化も、フラットで敷居の低い風土につながっていますし、そこに住んだ人が何かを始めればいいんです。このコーナーに登場する取り組みも、本当に素晴らしいですね。

か:ありがとうございます。僕たち移住者としては、すでにあるものを守っていくことも大事にしたいと思っています。

宮:もちろん大事ですが、時代も人も変わっていますし、24万人のうち流入者の方が多いまちですから、最初から住んでいる人間にも責任というものがあると思っていますよ。

先住者も移住者も、
それぞれがそれぞれにできることを。

か:これからの10年、茅ヶ崎はどんなまちになるといいと思っていらっしゃいますか? SDGsでは課題解決の方法をみんなで自分ごととして考えることを大事にしているんですが、宮治さんが考えていらっしゃることをぜひお聞きしたいです。

宮:僕としてはやはり「ミュージックシティ茅ヶ崎」として、ミュージシャンを援助するような施設やムードが生まれるといいな、と思います。茅ヶ崎は加山雄三やサザンオールスターズ、サチモスが単発で育ったのではなくて、その背景には音楽家や芸術家を創出するだけのバックグラウンドがあったわけですから。

:宮治さんの映画や書籍(※欄外)で、その背景がよくわかりました。この本を教科書のようにしてみんなで考えて仕掛けていけたらいいですね。

宮:まちにとって“根も葉もある”ことなので、それを利用しない手はないですよね。さらに言えば音楽のようにかたちのないものってすごく強いんですよ。ビルのようにかたちがあるものはいつか壊れますが、音楽は精神性みたいなものでもあるので、それこそ持続可能だと思います。

か:本当にそうですね。宮治さんが茅ヶ崎にいらっしゃるからこそできることなので、実現に向けて動きたいです。

宮:まずは新しい人も古い人も含めて、自ら考えて自ら行動することに尽きると思います。私も自分なりにやっていますが大河の一滴ですので、それぞれの立場でそれぞれができることをやっていきたいですよね。その上で、個人では限界があるところはやはり行政にも動いていただきたい。延期になった道の駅(2025年完成予定)のコンセプトにも、ぜひ音楽の要素を加えていただけるとうれしいです。私の夢は、「ミュージックシティ茅ヶ崎」構想のひとつのデバイスとして、道の駅にコミュニティFM局をつくることなんです。

か:いいですね! 夢とは言わずたくらみごとにしていきたいです。FM局は、市民にとって防災・減災対策としても役立ちますね。

宮:そう、観光客だけではなく、まずは茅ヶ崎市民が喜ぶ場所にしていくことが大事ですよね。そのための理念やスピリットをしっかり持っていたいものです。



映画と書籍

「なぜ茅ヶ崎はこれほどまで多くの著名音楽家を輩出しているのだろう?」という問いを皮切りに茅ヶ崎と音楽の特別な関係に迫る、宮治さん渾身のアウトプット作品。どちらも2017年公開・発表。かわていさんも「茅ヶ崎の地図が塗り替わった」と唸る、茅ヶ崎市民必見・必読の2作品。

DVD
『茅ヶ崎物語〜MY LITTLE HOMETOWN〜』
(ライブ・ビューイング・ジャパン)
書籍
『MY LITTLE HOMETOWN 茅ヶ崎音楽物語』(ポプラ社)

BRANDIN(ブランディン)
宮治夫妻が1999年にオープンしたミュージック・ライブラリー&カフェ。コーヒーを楽しみながら60〜70年代のポップ・ロックを中心としたアナログLP約1万枚を自由に聴くことができるほか、いまとなっては希少なジュークボックスでの音楽再生も可能。 

富士見町1-2
☎️0467-85-3818
水、木休  13:00〜18:00 (不定休あり)
http://brandin.cafe/


かわていさん

きれいごと委員長
かわていさん

博報堂にて37年間、国連における環境3大テーマ(気候変動、生物多様性、森林保全)からSDGsまで、国家規模、地球規模の錚々たるプロジェクトを手がけてきた。2023年に定年退職後は、日本写真家協会の写真家として活躍中。

かわていさん

SDGsは、2030年までに持続可能な社会を実現するために世界が合意した国際的な目標。2015年9月の国連総会で採択された。「貧困の撲滅」から「パートナーシップ」まで、社会、環境、経済の3つの側面が含まれた17の目標で構成されている。SDGs自体を目的化せず、コミュニケーションツールとして使いこなすことがポイント。


writer:池田美砂子
フリーランスライター・エディター。茅ヶ崎市在住、2児の母。
大学卒業後、SE、気象予報士など会社員として働く中でウェブマガジン「greenz.jp」と出会い、副業ライターに。2010年よりフリーランスライターとして、Webや雑誌などメディアを中心に、「ソーシャルデザイン」をテーマにした取材・執筆活動を開始。聞くこと、書くことを通して、自分が心地よいと感じる仕事と暮らしのかたちを模索し、生き方をシフトしている。

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