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川廷昌弘さんと語り合う チガサキのたくらみごと

“きれいごと”で茅ヶ崎はもっと面白くなる!?
かわていさんと語り合うチガサキのたくらみごと

vol.12 南湖ハウス
松本素子さん、岩崎愛さん、原田梨世ライリーさん

貧困も虐待も、問題になる前に地域で解決。
第三者とつながれる“みんなの実家”をつくりました。

 「茅ヶ崎の未来のために、今本当に必要なことは?」そんな問いを掲げ、このまちで自らの意志で行動している方々と  ”きれいごと委員長“かわていさんが語り合う本連載。

 今回は、今年7月にオープンしたばかりの多世代コミュニティハウス「南湖ハウス」を訪ねました。

「地域の子どもと大人がともに育ち合う場をつくりたい」という熱い想いを抱いて茅ヶ崎に集った3人が、絶妙なコンビネーションで取り組む ”たくらみごと“とは?

茅ヶ崎・南湖から
子どもと大人の関係に化学変化を!

か:名前の通り、家庭的でホッとする雰囲気ですよね。年齢も経歴もそれぞれ違う3人の個性が絶妙に噛み合っているように感じます。スタッフのみなさんのあり方が、まさに多世代共生の本家のようですね。

松:イメージしているのは ”地域のみんなの実家“です。それぞれの家庭から一品を持ち寄って子どもも大人も一緒に食事をするようなコミュニティ。食以外にも、音楽や絵など、いろいろな文化を持ち寄って交流できると、細くとも永く、そして楽しく関係性が続く場所になるのかな、と思います。か:集まった人がそれぞれの特技を発揮してお互いを褒め合うような地域コミュニティのイメージがわきました。

松:ごはん会の他にも、ママがホッと一息つける「子育て広場」や、養護施設を出た子どもたちが実家を味わいに来る「ユースサロン」、子どもに関する勉強会もやっています。今後はボランティアの方々と一緒にDIYで庭づくりをして、誰でも参加できる餅つきや芋煮会など季節ごとの行事も予定しています。

岩:問題を抱えた親子だけじゃなく、気軽に来た子どもと大人が自然に出会える場所になるといいですね。いろいろな化学変化が起こる場所。

松:地域のみなさんには「私はこれをやりたい」っていう提案をどんどん持ち込んでもらって、 ”お互い様“の関係をつくっていきたいですね。

第三者の”おせっかい“がつくる
子どもたちの居場所

か:誤解を恐れずに言うと、もともとは公民館がそういう役割を果たしていたんでしょうね。子どもも大人も集まれるイベントがあって、地域で顔の見える関係性が育まれる場所。それが今の社会では機能しにくくなってしまったように思います。茅ヶ崎の子どもたちも幸せであってほしいと思いますが、見えにくい実態はあるのかもしれない。

岩:茅ヶ崎の中でも社会全体でも、実態は見えにくいと思います。児童相談所に相談が上がっているのに保護されていなかったというケースもありますが、いまはケースワーカーがひとりで100件も抱えている状態で、そのシステム自体がまず問題だと思います。子どもにとって危険な状態なのに、法制度など課題があって状況はなかなか改善されません。

松:逆に、親が育てることができない子どもたちは親と切り離されてしまうことが多いのですが、ほとんどの子どもは「本当は親と暮らしたい」なのです。

 子どもの最善がそこにあるなら、周囲の大人たちがいい意味での ”おせっかい“をやいて一呼吸入れることで、双方の良さを気付かせ、別離を避けられることもあると思います。児童相談所の仕事も減らせますしね(笑)。

岩:問題になる前に、地域につながれる場所があったらいいですよね。

か:いわゆるセーフティネットですね。

岩:はい。一人でも相談できる関係が築けたら、子どもは生きていけるんです。

原:私もオーストラリアに教育実習に行ったときに、自分以上に自分を信じて見守ってくれるホストファミリーに出会い、救われた経験があります。日本の子どもたちは身体は元気でも心の幸福度は先進国の中でも本当に低いので、 ”第三の居場所“が必要だと思います。

岩:本当は南湖ハウスみたいに「誰でも来ていいよ」っていうお家がいっぱい増えたらいいな、と思いますが、まずは関係づくりですね。今は、「社会的養護(※欄外)」という言葉の認知度も低いですし、里親になるハードルも高いので。

松:国会議員の研究会を傍聴したりもしましたが、議員さんが動いてくれるのを待つよりも「自分たちでやろう! 」って思って、南湖ハウスをつくっちゃいました。

か:みなさんは子どもの問題の広報的役割を担っているのかな、と思いました。僕はSDGsを使って問題に気づいた人が自ら行動を起こすきっかけづくりをしたいと思っていますが、子どもの問題に気づいたみなさんが南湖ハウスをつくってくれたから、僕もこうしていろいろなことを知ることができました。クラウドファンディングも成功されたそうですが、これからもっとたくさんの人の心を動かす可能性は存分にあると思います。

厳しい経験をした子どもたちが
自ら動けば、社会は変わる。

か:ここまでお話を聞いて、子どもの見守りと同時に、子育てをしている大人のケアも南湖ハウスの大きなテーマなのかな、と思いました。

岩:子どもも大人も育ち合う場所になったらいいですよね。私は一時保護所で子どもに関わってきましたが、厳しい環境にいた子も、普通の暮らしを提供するだけで、自分で回復していくんです。特別なカウンセリングじゃなくて、地域のボランティアさんとご飯を食べたり買い物に行ったり、ただそれだけで。そんな子どもたちから大人がパワーをもらえる場所でもあるんです。

か:わかります。僕も自分の子どもを通して社会を学びましたね。昔の記憶で忘れちゃっていることも、子どもを通してもう一回学び直している感じでした。

松:それと同時に、子どもには「子どもの権利条約(※欄外)」に定められた権利がある。だから私は当事者を育てることが大事だと思っていて。

か:当事者というのは、社会的養護の子どもたちのことでしょうか?

松:はい。LGBTQの問題も、当事者が動いて良くなっているじゃないですか。でも社会的養護の子は教育を受けていないから、そのことにまだ気づいていないんですよ。子どもの権利条約には、自由に意見を表現できる「参加する権利」も定められているのに、そういった権利意識はすごく弱い。そんな子どもたちがここに来て自分の権利に気づいていくと、面白いことになっていくと思います。

か:たしかに、そうじゃないと社会は変わらないのかもしれません。厳しい経験をした子どもたちが、社会的養護の新しい法律をつくるような動きをしてくれたらいいですね。さらに言えば、こういう仕事をしている人たちにお給料が出るといい。子ども好きの人の仕事が増えて、児童相談所とは別の役割として多様性が出てきますよね。

岩:今後はそういった政策提言もできたらいいですね。子どもに関わる仕事をしたい人も増えて、ボトムアップしてみんなの幸せにつながります。

か:そうそう。社会的養護を受ける側も養護する側も役割が広がっていって、この言葉がもっと社会に優しく響くようになるといいですね。


子どもの権利条約

『はじめまして、子どもの権利条約』

監修:川名はつ子/イラスト:チャーリー・ノーマン/東海教育研究所

1989年、国連で満場一致で採択された国際法。日本も1994年に批准。「生きる権利」「守られる権利」「育つ権利」のほか、自由に意見を表し団体をつくることもできる「参加する権利」も定められている。子どもたちが自分の権利に気づくきっかけづくりのため、南湖ハウスでは、書籍『はじめまして、子どもの権利条約』を題材にした子ども向けワークショップも開催している。

社会的養護

虐待や経済的理由で保護者のもとで暮らせなくなった子どもたちを、公的な責任として社会的に養育、保護するとともに、養育に困難を抱える家庭への支援を行うこと。児童養護施設や乳児院における施設養護と、里親や養子縁組など家庭養護があり、日本では約45,000人もの子どもたちが社会的養護のもと、自分の親と離れて暮らしている。

       


かわていさん

きれいごと委員長
かわていさん

川廷昌弘(かわてい・まさひろ)。「きれいごとで勝負!」をキーワードに世界を股にかけて活動する茅ヶ崎人。博報堂DYホールディングス グループ広報・IR室CSRグループ推進担当部長、環境省SDGsステークホルダーズ・ミーティング構成員、神奈川県非常勤顧問。2019年12月より「茅ヶ崎市SDGs推進アドバイザー」に就任し、茅ヶ崎らしいSDGs推進をたくらみ中。

かわていさん

SDGsは、2030年までに持続可能な社会を実現するために世界が合意した国際的な目標。2015年9月の国連総会で採択された。「貧困の撲滅」から「パートナーシップ」まで、社会、環境、経済の3つの側面が含まれた17の目標で構成されている。SDGs自体を目的化せず、コミュニケーションツールとして使いこなすことがポイント。


writer:池田美砂子
フリーランスライター・エディター。茅ヶ崎市在住、2児の母。
大学卒業後、SE、気象予報士など会社員として働く中でウェブマガジン「greenz.jp」と出会い、副業ライターに。2010年よりフリーランスライターとして、Webや雑誌などメディアを中心に、「ソーシャルデザイン」をテーマにした取材・執筆活動を開始。聞くこと、書くことを通して、自分が心地よいと感じる仕事と暮らしのかたちを模索し、生き方をシフトしている。

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