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茅ヶ崎の北部丘陵里山環境に住むマニアックないきもの図鑑 file.13
サワガニ
DATA 甲幅(甲羅の幅)25〜30mm。本州〜九州まで広く分布する日本固有種。良好な水質を好み河川上流域や湧水の小川に生息する。甲羅の色は地域により変異があり、赤、褐色、青色の主に3タイプがある。茅ヶ崎市北部丘陵で見られるのは青色タイプ。雑食性でミミズや昆虫など様々なものを食べる。
⌘ 綺麗な水を好む「沢のカニ」
サワガニは名前の通り、川の上流部の清麗な沢に多数生息するカニ。水質の悪いところにはいません。茅ヶ崎北部丘陵の所謂「谷戸」からは良好な水が供給されているという証ですね。
⌘ 日本唯一、卵から一生を淡水域ですごすカニ
河川に生息するカニ類にはサワガニ以外に、アカテガニやモクズガニなどがいますが、これらのカニはよく知られる海のカニ(ズワイガニやワタリガニなど)と同じく産卵は海で行われます。
卵の大きさは0.4mm程で、その産卵数は1〜数万個に及びます。
海水中で孵化したカニの子は、およそ「カニらしくない形」をしたゾエア幼生からメガロパ幼生に変態するプランクトン時代を過ごし、ようやく「カニの姿」になります。プランクトンは魚の格好の餌になるのでカニの姿になるまでに大多数は魚に食べられてしまいます。
一方、日本で唯一淡水で産卵するサワガニの卵は2mmと大型です。卵の中には養分が蓄えられていて、ゾエア幼生→メガロパ幼生を卵の中で成長し、孵化した時には完全なカニの姿になっています。産卵数は極めて少なく最大50個ほどですが、卵はメスの腹部に産み付けられ、孵化するまで約1か月保護されるのでほとんどの卵がコガニまで成長でき、繁殖していけるワケです。
⌘ 神秘的なサワガニブルー
サワガニには、幾つかのカラータイプがあり、神奈川県内でも赤色、褐色、青色が生息してます。茅ヶ崎市北部丘陵の個体群は青色タイプがほとんどのようです。サワガニは、比較的飼育しやすく、神秘的な水色の個体は人気があり、鑑賞魚店などでは「サワガニブルー」の愛称で親しまれています。
小山茂樹 koyama shigeki
1972年生まれ、茅ヶ崎市勤務。県内絶滅種のヤマトオサムシダマシを2009年に茅ヶ崎市内にて再発見し、累代飼育方法を確立した。『月刊むし』『昆虫フィールド』など専門誌に不定期に執筆。