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psipsina
共恵
黒猫の名をもつパン屋さん
今号の特集は「黒猫の名をもつ パン屋さん」。タイトルになったのは、自家製酵母でつくるリーン(簡素)なパンが人気のプシプシーナ(psipsina)。ムーミンの生みの親、トーベ・ヤンソンが飼ってた黒猫の名前が由来のパン屋さんです
プシプシーナは、共恵の裏路地に店舗があり、対面販売で週末だけオープンする少しミステリアスなパン屋さん。行列ができていることも多く、パンを求める人たちはそれも含めて並ぶことさえ楽しんでいるような空気が流れています。
今回プシプシーナのさんには、パンを造形するところから焼き上がるまでを見せてもらいました。未来さんの手には、衛生上の黒いグローブがはめられていたのですが、パンを形づくる時のすばやくて軽やかな動きがきれいで、まるで黒猫がダンスをしているように映りました。
特集は他に、プシプシーナのパンを扱っている、ふたつの飲食店を紹介します。また11月20日(日)には、ラスカ茅ヶ崎にてブレッドフェスティバルを開催します。プシプシーナを含むパンやスイーツなど今回は19のお店の方たちと一緒に準備を進めてまいりますので、是非いらしてくださいね! (雨天の場合は6Fラスカホールほかにて開催)。
スパイスや具材がどっさりと。
目指すは「食べる人をあっと驚かせる」パン
街の片隅にひっそり佇む、猫の額ほどの小さなパン屋さん「プシプシーナ」。しかしそのたたずまいとは裏腹に、ショーケースには抜群の存在感を放つパンたちが所狭しと並ぶ。一体どんな味が繰り出されるのか、ワクワクせずにはいられない。
「食べた人がびっくりするような、そんな味わいのパンを作りたいんです。どうしたらそんなパンを作れるか、日々模索しながら作ってます」
と語ってくれたのは、店主でパン職人の未来さん。その言葉に違わず、プシプシーナのパンにはよそではお目にかかれない大胆な仕掛けが施されている。
一方大胆さで言えば、「熟成レーズンブレッド」も負けていない。こちらは何と小麦と同量のレーズンを配合。しかもレーズンがジューシーで味が濃く、これまでのレーズンパンの常識が覆されてしまう。プシプシーナのパンには、こんな嬉しいサプライズがたっぷり詰まっているのだ。
例えば、たっぷりの白ごまと黒ごまで夜の砂漠を表現した「シルクロード」には、スーパーフードのデーツ、カルダモン、シナモン、クローブなどのスパイスがたっぷりと。しかもスパイスは鞘からとったものやホールを粗挽きして使うため、香りの立ち方が半端ない。
粉と水と塩と自家製酵母のみで作る
リーン(簡素)なパン、そしてヴィエノワズリーも
店名「プシプシーナ」を冠したパン・ド・カンパーニュをはじめ、プシプシーナのパンは基本、粉と水と塩と酵母のみで作る。
このようなパンを「リーン(簡素)なパン」と呼び、小麦は北海道産小麦、水は仕上がりをまろやかにするコントレックス、塩は天然塩でコクの深さに定評のあるゲランドの塩、そして酵母は未来さん自らが丹精した自家製酵母を使う。至ってシンプルだが、本物だけを使って焼き上げたパンの味や香りは、味覚を超えて心に響く。いつまでも嗅いでいたい、味わっていたい、噛めば噛むほどに深まっていく風味。プシプシーナのリーンなパンには、そんな豊かさが感じられる。
かたやリーンなパンに対し、カルダモンをたっぷり使った「カルデムンマブッレ」やセイロンシナモンで作る「シナモンロール」などのヴィエノワズリー(パン生地を使ったお菓子)も大人気。芳香高くボリュームもあるので焼き菓子のようにカットしていただくのがおすすめ。
それぞれの魅力をぜひ味わっていただきたい。
練って焼く、パンはアート。
おいしいパンは造形も美しい
完璧とも言えるパンを次々と作り出す未来さんだが、じつは前職はデザイナー。他店で修行した経験は一度もなく、全て独学で積み上げた。一体何がきっかけでパン職人に?と尋ねると、じつにユニークな答えが返ってきた。
「陶芸家になりたかったんですけど、食べていくのは難しいかなと思って、粉と水を混ぜて練って形作って焼くなら、パンでもいいじゃない!って(笑)。私としては、パンはアートという思いがあるんです。形が美しいものは味も美味しいと。だから味だけでなく、造形も大事にしています」
今と違い、知識や情報の入手が難しい中、未来さんは試行錯誤を重ね、何度も失敗し、時間をかけてこの味を築き上げた。無駄な装飾のない、質実剛健だからこそ楽しめる本物の美の味を、しみじみと噛みしめて堪能しよう。
INFORMATION
psipsina(プシプシーナ)
住所 | 共恵1-16-12 |
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駐車場 | Pなし |
TEL | 0467-38-6067 |
営業時間 | 10:00 ~ 16:30(売り切れ次第終了) |
定休日 | 土日オープン |