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海街の本棚
石井光太 「ちいさな かみさま」
小学館 二〇一四 年
心の中のロウソクのような灯火。「希望」「夢」「勇気」と名付けるこれらを「ちいさな かみさま」と呼ぶ。
こんなかみさまの紹介から始まるショートストーリー集。普段目にするような光景の中にある小さな思いやり、相手を思う気持ちが、ほんのり浮かび出てくるようなお話ばかりです。
装丁にもある今日マチ子さんの、やわらかくてやさしいイラストも随所に添えられていてどの話も心に安らぎをおぼえ、穏やかな気持ちになれます。
ところで、いろいろなかみさまが出てくるわけですが、読んでいてもしやと思ったら、全てノンフィクションだったのです。
ノンフィクションというと、著者や出てくる人たちの実体験にいつも驚き、どうしたらこんな経験ができたり、大きな感動を抱くことができるのだろう、きっととてつもない行動派な人たちなんだろうなと、時には羨望にも近い思いを持ってしまうこともあります。でもそれは、もしかしたらノンフィクションに対するステレオタイプな見方だったのかもしれません。
冒頭の端書きにあったように一つ一つの出来事は、ろうそくの灯火のように小さく、身の回りで、いろいろな形で起きていて、鈍感な自分は、ただ気がつかないだけなのかと思ってしまいました。
小さなことでも、目立たない地味なことでも、それをきっかけにして、人を思うことの大切さ、暖かさということを感じていくことができればいいなと思うばかりです。