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映画作家 安田ちひろの湘南 つれづれ 日誌

「短編の読後感」

安田ちひろ

 今、短編小説の面白さ、構造みたいなものを調べている。質の良い短編小説を読んだあとの読後感はどこからくるのだろう。

 短編といえば、ショートショートの神様といわれる星新一。この著者の物語は誰が読んでも面白く、オチで「おおっ」という驚きがある。また社会問題にも言及していたりして、深いお話も多い。しかし、私はいま星新一の短編よりもトーベ・ヤンソンの短編に興味がある。ムーミンで有名なトーベ、実はムーミン以外の短編集も面白い。短編集「黒と白」の一遍「自然の中の芸術」から抜粋する。

 『芸術作品にせよ文学作品にせよ、はっきりと理由はわからぬままに人の心を動かすのは、外からは窺いしれぬ秘密をかかえているからだ。 芸術作品を前にしたときの無言の敬虔、そして使信(メッセージ)を自分なりに理解したいという欲求、このふたつは矛盾しない。』

 この作品に出てくる老夫婦は一つの『わけのわからぬ抽象画』を巡って、それぞれの作品の鑑賞の仕方の流儀を押し付け合う。だったらいっそ、作品を包んで中身を見えなくして壁に飾ればいい、というオチなのだ。

 トーベの物語は、わかりやすくオチが書かれていない。読んだあとに尾を引っ張られ、「なんだろう? 」と考察する余地を与えてくれる。題材は人間の本質や、哲学などが選ばれることが多い。また、一文一文に意味が隠されており、読み解くために高い集中力を必要とする。読む最中に体力が必要で、最後には気づきや閃きが起こる。これが心地よい読後感につながるのだろう。

 TVなど、わかりやすいメディアに慣れてしまうと、感性は気づかないうちに心の奥に埋もれてしまう。自分の感性を掘り起こすためにも、定期的に短編を読んでみようと思う。


安田ちひろ

安田ちひろ Chihiro Yasuda
1987年生まれ、茅ヶ崎在住。。大学在学時に自主映画制作を始める。関西TVドラマ「大阪環状線」第8話脚本など。湘南にて映画制作コミュニティ『スタジオMalua』を立ち上げる。プロアマ7名の作家による江ノ電1駅ごとの短編オムニバス映画「江ノ島シネマ」企画・プロデュース。

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