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チガサキゴトよ、チーガ

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映画作家 安田ちひろの湘南 つれづれ 日誌

「映画の神が降りてくる」

 茅ヶ崎には茅ヶ崎館という映画監督の小津安二郎氏が常宿にしていた旅館がある。小津監督がいつも泊まっていた「二番」の部屋で執筆をすると、不思議ななことにアイディアが湧いてするすると脚本が執筆できるという逸話があり、有名監督がよくお忍びで泊まりに来るのだという。

 脚本を書く時になにか不思議な力が働くことは私も経験したことがある。

 私が脚本を書き始めるときは、今自分の書きたいテーマやモチーフを絞ってそれに関する情報をネットや図書館に行ってかき集める。そうすると色んな断片的なネタが集まって、頭にシーンの映像がぼやっと浮かんでくる。その後、それに近いイメージの音楽を山の様に聞く。関連資料をかき集める。

 それを1ヶ月くらいちまちま続ける。そうすると突然最初の一行が浮かんできて何かに取り憑かれたように猛スピードで書き始める時が来る。それを私は「覚醒」と呼んでいる。覚醒とは、目がかっと開いて、背中に一本の筋がぴんと立って、前のめりになっている状態。そうなるのは、だいたい寝る直前か、風呂でぼーっとしている時。

 覚醒してる時の心地よさはなんとも言えない。タバコを吸うのも忘れてるし、指以外の体が動いていない。物語の世界に完全に入り込んでる状態だと思う。今まで考えた断片的なシーンや、主人公の心理状態の変化、行動が次々にパズルみたいにぱちんぱちんとハマって行って加速して止まらない。「神が降りてくる」なんて、物書きの人はよく言うが、本当に追い詰められた時はそういう不思議な力のようなものが助けてくれている気がするのだ。

 小津安二郎の部屋もきっと、追い詰められた作家を映画の神である小津監督が助けてくれているのかもしれない。


安田ちひろ

安田ちひろ Chihiro Yasuda
1987年生まれ、茅ヶ崎在住。。大学在学時に自主映画制作を始める。関西TVドラマ「大阪環状線」第8話脚本など。湘南にて映画制作コミュニティ『スタジオMalua』を立ち上げる。プロアマ7名の作家による江ノ電1駅ごとの短編オムニバス映画「江ノ島シネマ」企画・プロデュース。

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