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茅ヶ崎うまれの ものさがし

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ちがさき牛
齋藤牧場ものがたり

1942年、
1頭の乳牛からのスタート

  物語のはじまりは、今からちょうど80年前。1942年、現在の経営者である齋藤勝己さん・忠道さんの祖父・勝さんが1頭の乳牛を飼い始めました。ジャガイモやサツマイモの農家だった齋藤家、糞を堆肥として循環利用していました。徐々に頭数を増やし、1950年台には牛乳の販売をはじめ、「齋藤牧場」が誕生。当時茅ヶ崎市には、いま(2022年1月現在、乳牛農家は6軒)の10倍以上の乳牛農家がいたそうです。

 乳牛の牧場は勝さんから息子の実さん(勝己さん、忠道さんの父)へと引き継がれ、30〜40頭飼育していましたが、あるとき実さんが体調を崩します。毎日の搾乳作業に加えて乳房炎の対応などハードな仕事が困難になり、乳牛から肉牛へとシフトすることを決意。1989年、2000万円かけて鉄骨の牛舎を建て、肉牛農家として歩みはじめました。

最初の1頭と齋藤ファミリー

家族が集結し、
激動の時代を乗り越えて

当時はホルスタイン1頭と肉牛10頭の価値が同等と言われていた時代。茅ヶ崎市の肉牛農家は「齋藤牧場」ただひとつでした。実さんが経営に奮闘する中、長男・勝己さんは園芸の道へ。次男・忠道さんも別の進路を志していたため、実さんは頭数を減らしていきました。しかし勝己さんが海外へ園芸の研修に行ったとき、忠道さんは「僕が(齋藤牧場を)やろうかな」とポロリ。帰国後、同じ敷地内で園芸事業の準備をはじめた勝己さんも合流し、親子3人での経営がスタートしました。

 肥育した肉牛はその全量を農協へ出荷していましたが、2001年頃から、ひとたび狂牛病が発見されると、牛1頭の市場価格はそれまでの65〜70万円から一時は5〜7万円まで暴落。齋藤牧場の牛は検査で安全が確認できているにもかかわらず、出荷すればするほど赤字になる状態に陥ってしまいました。

 「なんとかしないと」。2004年頃には家族の生活を支えるために勝己さんが一旦他の職業に就くことを決意。実さんと忠道さんは規模拡大を目指し、2008年には4000万円かけて木造の牛舎を新設。2つの牛舎で最大140頭の肥育が可能になりました。

直売所、堆肥の商品化、6次産業化。
人とは違うことを

 

 2011年の東日本大震災後、セシウム検出により再び牛肉の市場価格が暴落し、齋藤さん親子は「自分たちでさばいて自分たちで売ろう」と決意。5月には敷地内に直売所を立ち上げ、屋号として「ちがさき牛」を掲げました。

 未経験だった販売に、当初は大苦戦。1頭分300キロの牛肉を消費するため、知り合いや親戚に電話をしたり、売れ残りは自分たちの食卓に並ぶ状態。そんな中、市長(※1)の記者発表をきっかけに多くのメディアに掲載され、月1頭のペースで安定して売れるようになりました。

 さらに、牛の糞を利用した「ちがさき牛完熟堆肥」(※2)の商品化や、6次産業化(※3)の認定取得にも尽力。「人と同じことをやっていたら生き残れない、違うことをやらないと」。実さんは口癖のようにこう言い、次々に新しい事業に取り組んでいきました。

先代の遺志を胸に、進化し続ける

2013年10月、実さんは「また3人で一緒にやろう」と勝己さんを引き戻します。その2週間後の朝、当日まで仕事をしていた実さんが倒れ、そのまま永眠。突然のできごとでした。生前、実さんは忠道さんに「レールは敷いたから好きに走ってくれ』と言っていたそう。そのすぐ翌日に、実さんが楽しみにしていた6次産業化の認定証が届いたのは、運命のいたずらとしか思えないできごとです。 その後は勝己さんが牛の管理全般を、忠道さんが販売・広報を担当。慣れない兄弟二人三脚での経営は困難も多く、それでもやって来られたのは「人に恵まれた」から。藤沢や葉山、厚木など、肉牛業界は地域の横のつながりが強く、当時から業界最年少(※4)だった忠道さんは、買い付けや餌の情報共有など、先輩方に助けられて歩んできたと振り返ります。地域とのつながりの中で市内の飲食店等卸売先も増え、2019年には全量を市場に出荷せずに「ちがさき牛」として販売できるようになりました。

 「人と違うことをやらないと」。父・実さんの遺志を継ぐように、困難な場面でも常に新しいことに挑戦し続ける兄・勝己さんと弟・忠道さん。ふたりの目には、進化し続ける「ちがさき牛」と茅ヶ崎のまちの未来が映っています。


※1  2011年当時の服部信明市長 ※2  肥料袋は底を切って筒状にして風除けや虫・鳥除けにする農家もあるため、実さんは「堆肥袋が、ちがさき牛の看板代わりになるのでは」と予想。「ちがさき牛完熟堆肥」の袋のデザインは 「ちがさき牛」の文字を大きくした。実際に、市内随所の畑で広告的な役割を果たすようになったのだとか。商品詳細はP13参照 ※3  生産者(1次産業者)が加工(2次産業)と流通・販売(3次産業)も行い、経営の多角化を図る取り組み。農林水産省が認定、推進している。 ※4  2022年1月現在、40歳の忠道さんは、いまも変わらず最年少。


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INFORMATION

齋藤牧場

住所 芹沢397-1
TEL 0467-51-0128
営業時間 直売所: 金・土・日 10:00〜17:00
定休日 直売所:月〜木曜休み
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