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茅ヶ崎の北部丘陵 里山環境に住むマニアックな昆虫図鑑 file.11

カントウタンポポ
DATA 関東地方、中部地方東部に分布する「ニホンタンポポ」の一種。草丈15〜30cm。開花期は3〜5月に限られる。夏場は落葉、休眠する。茅ヶ崎市では北部丘陵に多く見られる。
⌘ 季節感ある春の花、カントウタンポポ
春のイメージのある黄色いタンポポ。しかし市街地で見られるほとんどは、ほぼ1年中花を咲かせている外来種のセイヨウタンポポです。一方、在来種のカントウタンポポは3〜5月に限定されるので、まさに季節感のある春の花と言えます。
⌘ 夏は成長を止めて仮眠。合理的な省エネ派
ハチなどに他のカントウタンポポの花粉を運んでもらい受粉した後、種子を飛散させて落葉して成長を止め、夏眠します。
夏場は多くの植物が光合成を有利に進めるため、茎を伸ばし葉を展開するので、地際に葉を広げるタンポポは「日照権争い」に勝てません。争うよりも寝てしまう方が生存に有利なんですね。
一方、セイヨウタンポポは単為生殖。花粉を必要とせず種子が実る、自己のクローンで夏場も条件が良ければ繁殖し続けます。
⌘ カントウタンポポ vs セイヨウタンポポ
カントウタンポポは、茅ヶ崎では北部の里山の林縁や田畑の隅などで見ることができますが最近は少なくなってきました。
減少の一途を辿っている理由は、セイヨウタンポポが1年中開花し、種子を飛散するからだとされてます。確かに繁殖力は旺盛ですが、実は
① 市街地は土壌が乾燥気味 (湿潤な土壌が必須)
② コンクリートによる土壌のアルカリ化(酸性土壌が好み)
この2つが乾燥やアルカリ化土壌に強いセイヨウタンポポの繁栄を後押ししたと考えられます。市街化による田畑の埋め立てや雑木林の造成、宅地化が無ければカントウタンポポの方が生存能力は高かったに違いありません。

左:カントウタンポポ 右:セイヨウタンポポ
セイヨウタンポポはガク(外総苞片)が反り返っている。近年は交雑が進んでいて、ガクの反り具合の特徴だけでは判別は難しいようです
(画:小山)