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チガサキゴトよ、チーガ

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独立系書店のじぶんを生きるための 読書案内 file.03

『10年後、ともに会いに』
2,750円(税込)著:寺井暁子(クルミド出版)

 今の状況に違和感はあるけれど、かといって他にやりたいことがあるわけではない。日々をこなすことに精いっぱいで、腰を据えて自分と向き合う時間もない。そんな時間があったとして、実現しそうもない「やりたいこと」に気づいてしまうのが怖い。進むことも引き返すこともできない、まさに八方塞がり。そんなときは、心の赴くままに旅に出てみるのもいいかもしれない。

 「前に進みたくて疼いている心を認識した途端に、頭が自分に質問を浴びせてくる。ちゃんと意義はあるの?これからの見通しは?(中略)泣きたいような、叫びたいような感覚としばらく付き合って歩いていたら、ようやく「旅に出よう」と決心がついた。」当時27歳の寺井暁子さんは、仕事を辞め、アメリカで過ごした高校時代の旧友を訪ねる世界旅行を決意する。

 20代後半という、これからどんな道でも選択できるがゆえの焦りがつきまとう年代。キャリアに邁進する者、新たな生活を模索する者、社会に働きかける者。それぞれの状況をそれぞれの価値観で生き抜く旧友たちと過ごす中で、著者は幾度となく自らの「揺れ」を経験する。

 「自分探しの旅」という言葉をずいぶん聞かなくなったように、旅に出ればまだ見ぬ自分と出会えて万事解決、とはそうそういかないだろう。それでも、今いる場所から一歩離れてみることで、確実に視野は広がる。そして、必ずしも壮大な旅に出る必要はきっとない。身近な人とじっくり言葉を交わしその人生に触れてみることだって、立派な旅だ。八方塞がりだと思っていても、たいていはそこにある小径に気づいていないだけなのだろう。駅のホームで涙が止まらなくなった自分に、そっと教えてあげたい。

吉田悠希 / CRAYD BOOKS & COFFEE

Yuki Yoshida/1994年生まれ。会社員や教職員を経験後、2026年に書店を開業。13歳で重松清の『きよしこ』に出会い読書好きに。特技はオセロと黄昏れること。

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