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チガサキゴトよ、チーガ

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映画作家 安田ちひろの湘南 つれづれ 日誌

「思考と禅」

安田

 私は人よりも思考の多い人間だと思う。

 ある時、同時に色んなことを考えすぎて、頭が回って気持ち悪くなった。ふと「心頭滅却」という言葉が思い浮かんだ。しばらくその言葉を頭の中で呟くと、思考が止まり、体が動き始めた。その時、自分を苦しめるのは、自分の「思考」だと感じた。

 禅の言葉である「心頭滅却すれば、火自ずから涼し」を日本で広めたのは快川禅師である。織田軍によって焼き討ちに遭う禅師は、逃げられぬ炎を前にして「安禅は必ずしも山水をもちいず。心頭滅却すれば、火自ずから涼し」と言い、炎の中へ消えていったという。安禅とは座禅のこと。座禅をするには必ずしも山水(山や水辺やなど心落ち着く場所)でなくても、どこでも可能である、と。自分の心を落ち着かせることができるのであれば。

 私の制作した映画・江ノ島シネマ「東京に眠る」は、都会に住む主人公が日々に追い詰められ、逃げ出し、静かな鎌倉の地に行く話である。

 鎌倉は禅寺や自然が多く、いわゆる山水である。心落ち着けた主人公は、最後、外国人の女性に「東京へ行こう」と誘われるがそれを断り、「もう少ししたらね」と伝える。

 それは、行きたくない訳ではなく「自分にはまだ早い」という意味だ。

雑踏渦巻く都塵の中へいても、自分を見失わなず、落ち着けるようになるまで、まだ待っているという意味だ。

 生きている限り、「山水」にいられるとは限らない。自ら行かなくとも他の力に巻き込まれ、「火」の中に生きなければならないこともあるだろう。それを辛いと思うのは、仏や神様じゃないなら当たり前のことだ。私たちは今はまだ修行している最中である。いつかどこでも座禅が組めるようになった時、きっと今ある苦しみから解放されるのだろう。


安田ちひろ

安田ちひろ Chihiro Yasuda
1987年生まれ、茅ヶ崎在住。。大学在学時に自主映画制作を始める。関西TVドラマ「大阪環状線」第8話脚本など。湘南にて映画制作コミュニティ『スタジオMalua』を立ち上げる。プロアマ7名の作家による江ノ電1駅ごとの短編オムニバス映画「江ノ島シネマ」企画・プロデュース。

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