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SATOYAMA育ち
盛夏のナス談義
農家育ちだと、買うのが凄く悔しい気持ちになる野菜にナスがあります。何故かというと、初夏から秋にかけては、農家の台所にはナスが転がっているものだからです。
夏の昼ご飯といえば「焼きナス」「ナスの天ぷらかナスの油味噌(ナスの甘辛い味噌炒め)」に、「ナスの味噌汁」「ナスの漬物」と相場が決まっていて、大人たちは「油味噌があれば何にもいらない」とか「秋ナスは嫁に食わすなというくらいうまいんだ」とナスを絶賛していましたが、子供心には(またナスか……)と。あんまリ美味しいとは思えずうんざりしていました(農家あるあるかな)。
大人になった今では、ポリフェノールの一種であるナスニンを多く含むナスは夏にはなくてはならない食材ですし、和洋中華と美味しさを堪能しています。
以前は「なすび」でイメージする形や色(紫系のナス紺色)は相場が決まっていましたが、近年ではおしゃれな「白ナス(トルコナス)」や「ゼブラナス(縞ナス)」も人気があります。
白ナスは「茅ヶ崎のトルコナス」としスーパーでも見かけるようになりました。いただいてみると皮まで柔らかく、太めのものを輪切りにしてピザ生地の代わりにしたら、ヘルシーでとても美味しかったですよ。
さて、8月と言えばお盆です。お盆には農作業の手を休めてご先祖の「おしょろさま(御精霊様)」をお迎えするお盆棚を飾り、きゅうりとナスをそれぞれ馬と牛に見立てたものを家の門のところに置き、お墓に迎えにます。足の速い「キュウリの馬」で来てもらい、帰りはゆっくりと「ナスの牛」で戻るということらしいです。割り箸のようなオガラを4本づつ足として差し込むのですが、一発でナスとキュウリにバランス良く刺せるかどうか……責任重大です。
「おしょろさま」の乗り物と、美しいナスたち
髙橋浩美 Takahashi Hiromi
実家が茅ヶ崎里山で代々農家の野菜ソムリエプロです。実家での筍や大根の収穫体験BBQを通して里山の良さを伝えるべく「湘南の里山を楽しむ会」を主宰しています。野菜ソムリエプロ/冷凍生活アドバイザー/食育インストラクター/命の食事アドバイザー/かながわブランドコンダクター/湘南ベジフルふぁんファン