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海街の本棚
アクセル・ハッケ
「ちいさなちいさな王様」
講談社 二〇一四年

柳田邦男氏が「大人が読むべき絵本」と紹介しているだけあって、中身は哲学的。
この王様の種族は生まれたときがいちばん大きくて、だんだんとちいさくなっていき、しまいには見分けがつかなくなるという。
主人公の「僕」はサラリーマン。子どもの頃はとっても大きな夢をもっていたのに、大人になっていくにしたがって、その夢がちいさくなっているんじゃないかなど、ちいさな王様と話をしながらいろんなことに気がつきます。
ところでこのちいさな王様、クマの形をしたグミが大好きなんです。そのグミは暖炉のすぐ脇に住んでいる「偉大な絵持ち」が持っていて王様が描いた絵と交換してくれます。王様は小さな紙と色鉛筆の折れた芯で、黄緑色の王冠の絵を描きます。そして、「偉大な絵持ち」のところにこの絵を運ぶとき、
「僕」に一緒におもちゃのトラックに乗れ! と言います。「僕」は体が大きすぎて乗れません。それなら、ソファで座って一緒に届けにいくことを想像しろと言い、運んでいる途中に絵について話しをしてくれます。
人は、一生自分のまわりの世界を見た分だけ、頭の中にたくさんの絵がたまっていく。毎日見る絵もあるだろうし、そうでない絵は頭の中でも奥深い部屋にかけられたまま。探すか偶然でもない限り、その絵と出会うことはないとしても、その絵は一枚一枚ちゃんと頭の中にかかっているんだよ、と。個人的にはここの部分がとても好きです。
夢の話をしてくれる王様に気がつかなくて寂しい思いをしていませんか。この本を読めば、ちいさな王様がすぐそばにいるのがわかりますよ。