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川廷昌弘さんと語り合う チガサキのたくらみごと
“ き れ い ご と ” で 茅 ヶ 崎 は も っ と 面 白 く な る!?
かわていさんと語り合うチガサキのたくらみごと
vol.02 moyau project
子育ても仕事も暮らしも、すべて「モヤウ」の心でつながっている!
人とまちの可能性を引き出すファミリープロジェクト
「きれいごとで勝負!」を合言葉に、まちの未来を面白くするたくらみごと(欄外)を紹介するこのコーナー。”きれいごと委員長“かわていさんとともに活動の本質に迫り、茅ヶ崎の未来を紐解いていきます。
かわていさんのご自宅で開催された今回のゲストは「moyau project」の市川靖洋さん、市川歩さん。夫婦で子どもとまちをつなぐファミリープロジェクトを立ち上げ、各種ワークショップを開催するおふたり。かわていさんも「素敵だなぁ~」と思わず唸った、その生き方とはいかに!?
子育ては最大のプロジェクト!
か:おふたりとはもう10年以上のお付き合いですけど、まずはどんな活動なのか教えていただきましょうか。
靖:活動というよりも…生き方みたいな話になっちゃうんですけど。
か:生き方!ぜひ聞きたいですね~。
靖:6年前に子どもが生まれたことが自分たちの人生の中ですごく大きなきっかけで。14年前に株式会社ボンド(欄外)をつくって、地域のためのウェブ制作をしてきましたけど、それはどちらかというと仕事というくくりでした。
か:地域の志をかたちにするという素敵な仕事だよね。
靖:もともと会社名もロゴマーク(欄外)からつくったんですけど、自分たちが湘南エリアの“点の魅力”のつなぎ役になれば、新しい価値が生まれるんじゃないかと思ったんですよね。
か:接着剤のボンドじゃないんだ!浅かった~(笑)!
靖:役割としては接着剤なので間違いではないですよ(笑)。そんな想いでやってきたところに子どもがチームに入って、今までの自分たちにはなかったプロジェクトが始まったんです。まちや人との付き合い方が感覚的に違ってきた。
か:人生のステージアップだもんね。
靖:ちょうどその頃、子育て情報サイトの事業を茅ヶ崎市と一緒に進めていて、取材を通してまちの課題など初めて見えてくることがあったりして。じゃあ、子どもと暮らすこと自体を、市川家としての最大のプロジェクトにしたらどうなんだろう、と。
か:おぉ~!自分たちの人生もデザインしてますね。
家族の生き方に、名前をつける。
か:それがmoyau projectなのかな?
靖:自分たちの暮らしのプロジェクトに名前をつけたんです。モヤウって漢字で書くと「舫う」で、船と船が流れていかないように結びつけている様子のことなんですよね。以前出会ってずっと大事にあたためていた言葉で、市川靖洋と市川歩と息子、家族3人の人生に名前をつけるとしたら「moyau project」だな、と。
か:すごい!ファミリープロジェクトに名前つけちゃった!
歩:自分たちの精神の持ち方というかね。
か:志というか。まさに生き方、ライフスタイルだな。
靖:moyau projectという名前では、今、プログラミングとかシルクプリントとか、もともと自分たちが家で子どもとやっていたことをワークショップにしていますが、僕らの中では、会社もまちでの活動も、moyau projectの下にぶら下がっているようなイメージで。
歩:子どもの小学校の付き合いもそうだし、個人的にやってる中学生の学習支援のボランティアも、そう。子どももmoyauの一員で、名刺も持ってるんですよ。「興味ある大人に渡しなさい」って(笑)。
か:僕、もらってないよ~(苦笑)! でもいろいろ聞いて納得だな。子どもが生まれて人生観みたいなのが自分たちのなかで少しずつ醸成されてきて、自分たちのビジョンみたいになってるんだろうね。公私関係なく、生き方としてつながっている。それをキーワードとして掲げて、アウトプットの判断基準になっているのは素敵だと思う。
小嶋(Cheeega編集長):家族の精神の大もとのところを言葉にして持とう、と思ったのは開発ですよね。市川家は、新しいことをやっちゃってる。
か:開発だねー、とってもSDGsだ!
小嶋:お、きれいごと委員長の本領発揮ですね。
か:偉そうに解説するつもりはないけどね(笑)。SDGsの「D」はDevelopment(開発)で、国連が言っているのは、Human Development(人間開発)つまり人の可能性を開いていくことだと僕は勝手に位置づけているんです。SDGsは、「すべての人たちの可能性を引き出すことによって今までにない良い結果を出しましょう」と言っている。市川家は想いを見える化することで、一人ひとりの可能性を開いていく役割ですよね。さらに今は、自分たちの想いを言葉にして地域に開いた場づくりもして、自分たちの可能性も地域の家族の可能性も開いていってる。SDGs的な生き方だと思います。
どんなちっちゃなことでも、ちゃんと考える。
か:改めて、市川ファミリーの存在は茅ヶ崎にとって影響力が大きいな、と思いました。プログラミング教室でしたっけ? プロジェクトを地域に開いてみて、どうですか?
靖:親子だけのときに比べて、子どもも大人も、体験できる可能性が圧倒的に広がりましたね。
歩:私たちが教えられることだけじゃなくて、地域の家族と一緒に学んだり開発したりできる可能性が見えてきたというか。それは自分たちのメリットにもなるし、子どもにも親以外の大人に触れ合える機会があるっていうのが本当に大きいな、と思います。
か:「自分たちもやってみたい」って刺激を受ける家族も多いんじゃないかなー。何かヒントはありますか?
靖:どんなちっちゃなことでも、ちゃんと考える。子どもがやりたいこともすべて。「お父さんが言ってるから」みたいなのはナシ。
歩:子どもがリーダーになることもあるし、それこそホワイトボード見ながら3人で話し合う、みたいな。
靖:家にホワイトボード置くっていうのはいいよね。家族の一部だけを地域に開くっていうのもいいし、開かれているところに行くだけでも今までと違った出会いがあります。
歩:私たちもそういう場に行くんですが、moyau projectが進化していくことにつながっています。それは大きな気付きかな。
24万人全員がクリエイターに!
か:これからはどんな進化を?
歩:今のたくらみは、フォントをつくるワークショップかな。
靖:うちの子は左利きなので面白い鏡文字書いたりするんですよね。その字を残すのは面白いなあ、って。
歩:デジタルとアナログの共有みたいなところをできたらいいな、と。
靖:もっと言えば、子どもだけじゃなくて、まちのみんなの手書きの文字をフォントにすれば、みんながクリエイターになる可能性があるんじゃないかな、って。それをアーカイブしてフリーで使えるようにしたら面白い。写真やイラストでもできますよね。つくる側になると、ものを大切にする心も芽生えてくるし、それが結果としてSDGsにつながっていくこともあると思うので。
歩:茅ヶ崎市の24万人全員がクリエイターというか。スキルがあるからじゃなくて、そこに住んでいること自体で、何かつくり出すことができる。テクニックは持っている人に教えてもらえればいいし。それって移住促進にもつながるまちの魅力になりますよね。
か:めちゃくちゃ面白いなぁ。「茅ヶ崎のフォント」みたいに見える化したものがあるとコミュニケーションツールとして機能するよね。SDGsも、社会の問題を全世界全人類と共有するために見える化したもの。茅ヶ崎のクリエイティブファイルを見える化してみんなでまちをつくっていくと、まちの可能性が開けていきますね!
株式会社ボンド
市川靖洋さんが代表、歩さんがディレクターを務めるデザイン制作会社。「NPO法人湘南スタイル」などの地域活動で培ったネットワークを活かし、ウェブサイトなどのツールづくり(手段)を目的化せず、本質的な課題解決を見据えたプランを提案・実行する。
moyau project
(モヤウ・プロジェクト)市川家の想いをかたちにしたファミリープロジェクトとして、2019年4月に満を持してキックオフ。子どもたちの「学びと地域の接触面」を広げ、身近な問題解決や学びのためのスキルを地域で磨くことを目的に、プログラミング教室、アップサイクルを目的としたシルクプリントワークショップなど、親子で楽しみながら地域とつながる場づくりを行っている。
たくらみごと
暮らしの中の小さな困りごとを、ちょっとしたアイデアで楽しみながら解決していくプロジェクトのこと。ウェブメディア「TAKURAMI」では、試しにやってみたくなるようなたくらみごとを紹介している。 https://takurami.org/
SDGs
SDGsは、2030年までに持続可能な社会を実現するために世界が合意した国際的な目標。2015年9月の国連総会で採択された。「貧困の撲滅」から「パートナーシップ」まで、社会、環境、経済の3つの側面が含まれた17の目標で構成されている。SDGs自体を目的化せず、コミュニケーションツールとして使いこなすことがポイント。
“きれいごと”とは
みんなが本当はこうした方が良いと思っている「きれいごと」。そのままに行動するとこれまでは揶揄されましたが、これからは未来世代のための行動を褒め称える社会を
つくっていきましょう!
きれいごと委員長
かわていさん
博報堂にて37年間、国連における環境3大テーマ(気候変動、生物多様性、森林保全)からSDGsまで、国家規模、地球規模の錚々たるプロジェクトを手がけてきた。2023年に定年退職後は、日本写真家協会の写真家として活躍中。
writer:池田美砂子
フリーランスライター・エディター。茅ヶ崎市在住、2児の母。
大学卒業後、SE、気象予報士など会社員として働く中でウェブマガジン「greenz.jp」と出会い、副業ライターに。2010年よりフリーランスライターとして、Webや雑誌などメディアを中心に、「ソーシャルデザイン」をテーマにした取材・執筆活動を開始。聞くこと、書くことを通して、自分が心地よいと感じる仕事と暮らしのかたちを模索し、生き方をシフトしている。