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独立系書店のじぶんを生きるための 読書案内 file.04

『アルケミスト 夢を旅した少年』
 著:パウロ・コエーリョ
山川紘矢+山川亜希子 訳
836円(税込)  (KADOKAWA)

 何年か前「心の声を聞く」という言葉に出会った時、その意味するところがまったくわからなかった。今頭で考えていることがすべてであり、それ以外は存在しないと思っていた。けれどそれは、ふとした時に涙として私の前に現れた。心の声を無視し続けていた私への、最後の訴えとして。

 『アルケミスト』の主人公・羊飼いのサンチャゴは、宝物を求めて旅に出る。決して平易ではなかった道中で出会った錬金術師(アルケミスト)は、彼にこう言う。「おまえの心に耳を傾けるのだ。心はすべてを知っている。」

 心はときに、というか基本的に、ちゃんと生きることを邪魔してくる。会社に行きたくない、一日中寝ていたい、ご飯を作りたくない…。だから、私はずっとその声を無視してきた。いちいち耳を傾けていたら、社会生活が破綻してしまうから。そうやって無視し続けるうちに、心の声は聞こえなくなっていた。

 心に耳を傾けなければならない理由を、錬金術師はこう言う。「なぜならば、心を黙らせることはできないからだ。たとえおまえが心の言うことを聞かなかった振りをしても、それはおまえの中にいつもいて、おまえが人生や世界をどう考えているか、くり返し言い続けるものだ。」

 ただ心の声に忠実に従えばいいということでもないのが、このテーマの難しいところだ。心は怠惰で、怒りっぽくて、怖がりだ。心のままに生きるのも良いのだろうが、それでは果たせない夢ーたとえば宝物を見つけることーもあるだろう。それでも、その声に耳を傾け続けること。決して無いものにしないこと。そうすれば、心は私たちを助け導く、一番の味方になってくれる。サンチャゴの心がそうであったように。

吉田悠希 / CRAYD BOOKS & COFFEE

Yuki Yoshida/1994年生まれ。会社員や教職員を経験後、2026年に書店を開業。13歳で重松清の『きよしこ』に出会い読書好きに。特技はオセロと黄昏れること。

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