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川廷昌弘さんと語り合う チガサキのたくらみごと

“きれいごと”で茅ヶ崎はもっと面白くなる!?
かわていさんと語り合うチガサキのたくらみごと

vol.07 めぐみの子幼稚園 田崎由布(ゆふ)さん

焚き火、泥んこ、井戸水。
3歳から原体験を育み、
自然と人がともに“いかしあう”まちへ。

かわてい
田崎由布さん(左)、かわていさん(右)

茅ヶ崎で同時多発的に沸き起こっている ”たくらみごと“。 本コーナーでは、その首謀者に登場いただき、 ”きれいごと委員長“かわていさんとともに、まちとひとの未来についてたっぷり語っていただきます。

今回のゲストは、「めぐみの子幼稚園」副園長の田崎由布さん。「SDGsは幼児教育から始まっている」と考えるかわていさんからのラブコールで対談が実現しました。秋晴れの中訪れた幼稚園の園庭では、焚き火を囲む子どもたちの姿が。園から地域全体へと広がりつつある、人と自然がともに  ”いかしあう“ための原体験を育む保育とは?

火ってそんなに簡単についちゃうの?

かわてい

か:子どもたち、焚き火で盛り上がっていましたね。

田:お泊り会の時、かまどでご飯を炊いた経験の続きなんです。「燃やす」こと自体に興味を持っていたので、今日は「自分の好きなものを燃やしてみよう」ということになりました。普段から子どもたちは、葉っぱを工作の材料にしたり、火遊びをしたり、井戸水でずぶ濡れになったり、五感を使っていろいろな経験をしています。その根っこにあるのは、「遊びを中心とした保育」。知的好奇心を刺激するものはすべて遊びの中に入るので、とにかく遊ばせたいと思っているんです。

か:自然の中にあるもので家を建てたり、火をおこしてご飯を炊いたり、そもそも人が生きていくためにやってきた行為が、子どもたちにとって遊びになっている気がします。

田:年長さんにもなると、水は洗濯に、火は料理に、自然が暮らしにいかされていることに気づきます。それは、水、土、火という自然に触れた遊びを続けてきて面白さも怖さも不快も経験して身近なものになっているからこそだと思うんです。

か:僕が今回お話を聞きたいと思ったのは、地球上でどう生きていくかを考えたときに、大人になってからではただの知識ですが、子どもの頃から自然に触れていると、それが沁み込んで大人になっていくと思ったからです。ガスコンロのツマミをひねると火がつく、といったことが今は当たり前になり過ぎている。それが焚火とつながる原体験ができるのは大きいですね。「火ってそんなに簡単についちゃうの?」って思うでしょうし。

田:そうですね。それに、「いいとこ取りをしない」ことも大事だと思います。芋掘りだけではなく、種や苗から育てて、枯れちゃうところも見せていく。虫を殺すなど残酷なことも止めずに見守る。そういう原体験、原風景の先に、「自然と人間がいかしあう」という考え方を持ってほしいと思っています。自然からいただかないと人は生きていけないですし、いただくためには人が手を入れなくちゃいけない部分もある。だから最終的にはいかしあうことで、自然も人も持続するのかな、と思います。

か:人も生物ですし、それに尽きますね。SDGsでは、プラスチックなど人が便利だと思って開発したもの自体を否定するのではなく、それを改善して生態系の中に還るものをつくろう、と考えていきたい。そういうことを子どもの頃から体験で身につけて、知恵をつける。幼稚園時代からSDGsの取り組みが始まっているんですね。

田:なんだか壮大な感じがしてしまいますね(笑)

か:いやいや。でも人間の原点のお話をされているな、と思います。

大事なのは、「自然だけ」ではない

かわてい

か:田崎さんは、そもそもなぜこのような幼児教育に携わろうと思われたのですか?

田:私の原点には、「子どもにとって生きることは遊び」という学びがあって、就職のときに遊びを中心にした幼稚園を選びました。その園の保育の中で、自然のものを取り入れることでこんなにも変化があるんだと気づいたんです。工作に割り箸ではなく枝を使うと、節をどういかすかなど考えることも増えるし、みんな違うものができあがる。そこに面白みを感じて、保育者が意図的に自然を持ち込むようにしたんですね。そうしたら、四季折々や年ごとの変化に子どもの発想も加わるので、同じ行事をやっても全く違う姿があって、私たちも飽きなくて辞められなくなっちゃいました(笑)。でも一方で、自然だけではダメだとも思っているんです。

か:それはどういうことでしょう?

田:私が特に強く思うのは、人とのつながりの中で子どもは育つので、集まりが必要だということです。話しあって決めたり、知恵を出しあったり、生きることは遊ぶことであると同時に、「遊び=生活」だと思っているんです。

か:非日常ではなく日常の中で自然と触れあうことで、社会性も身についていくということですよね。3年間の成長は大きいですか?

田:大きいですね。特に少人数で3年間同じメンバーと過ごすと、子ども同士が深くつながります。話しあって行事を決めるときも、折りあいをつけるためにみんなで心を砕きあうので、育ちあう姿がダイレクトに見られて面白いですね。

地域全体で未来づくりを楽しむ

かわてい

か:こういった体験を積み重ねた子どもたちは、どんな大人になっていくのでしょうね。

田:卒園生は、「自分の子どもにも経験させてあげたい」っておっしゃる方が多いです。やっぱり根っこの部分になっていると思いますし、原風景として残ると信じてやっていきたいと思います。私たちは種まきをしていて、いつ芽が出るのかはわからないんです。

か:そうですよね。でもそういう原体験があると、自分に正直に生きることができるんじゃないかと感じました。

田:正直で自分をしっかり持っているだけに、難しさを感じる子どももいます。でもそれを越えたところに学びがあって、自分の力にしていけると思うんです。

か:そういう子どもたちを育むことが、園の中だけじゃなくて地域の考えになるといいですね。茅ヶ崎は自然も豊かですし。

田:アフリカのことわざで、「子どもひとりが育つには、ひとつの村が必要だ」というものがありますが、保育者だけじゃなくて、事務職員も保護者の方も含めて、みんなで子どもを育てていきたいですよね。実際に在園中の保護者のみなさんは、他のお子さんも自分の子どものように見守りあって助けあいの中で子育てをされています。それが卒園後も「地域のためになにかしたい」という気持ちと行動につながっているようです。

か:今年から小学校の教科書にもSDGsが載っていますが、今、持続可能な社会の担い手を育てることは義務教育なんです。これは先生だけが教科書に書かれたことをどう教えるか考えるのではなく、地域全体で未来づくりを一緒に考えていくということ。それこそが、SDGs教育のあり方ではないかなと思っています。

田:私たちも書籍で自然の面白さを伝えたり、未就園親子のための場をつくったりして園の考えを伝えていますが、結局、大人が楽しんで幸せに生きている姿を見せることが一番大事な教育だと思います。つまらなそうにしていたら、そこから子どもは何も学ぼうと思わないですよね。

か:仕事も同じで、遊びのように楽しんでいるから発想力が生まれていい仕事ができますよね。僕もやりたくてこの仕事をやっていますし、これからもそうありたいと思います!


田崎由布 tasaki yufu
「めぐみの子幼稚園」副園長。姉妹園である「ひかりの子幼稚園」を経て現職。「子どもにとって生きることは遊び」を信条に、28年間幼稚園教諭を務める。日々の保育実践のほか、卒園保護者の登録制助けあいシステムなど、子育ての環境づくりにも注力している。


かわてい
かわてい

めぐみの子幼稚園

学校法人荻野学園が運営する私立幼稚園。茅ヶ崎市下寺尾の住宅街の中で、「キリスト教保育」、「自然を生かした保育」、「遊びを大切に考えている保育」を3本柱に、小規模で家庭的な保育を営んでいる。未就園児向け「親子のつどい」など、地域に開いた取り組みも。


かわていさん

きれいごと委員長
かわていさん

博報堂にて37年間、国連における環境3大テーマ(気候変動、生物多様性、森林保全)からSDGsまで、国家規模、地球規模の錚々たるプロジェクトを手がけてきた。2023年に定年退職後は、日本写真家協会の写真家として活躍中。

“きれいごと”とは
みんなが本当はこうした方が良いと思っている「きれいごと」。そのままに行動するとこれまでは揶揄されましたが、これからは未来世代のための行動を褒め称える社会をつくっていきましょう! 


かわていさん

SDGsは、2030年までに持続可能な社会を実現するために世界が合意した国際的な目標。2015年9月の国連総会で採択された。「貧困の撲滅」から「パートナーシップ」まで、社会、環境、経済の3つの側面が含まれた17の目標で構成されている。SDGs自体を目的化せず、コミュニケーションツールとして使いこなすことがポイント。


writer:池田美砂子
フリーランスライター・エディター。茅ヶ崎市在住、2児の母。
大学卒業後、SE、気象予報士など会社員として働く中でウェブマガジン「greenz.jp」と出会い、副業ライターに。2010年よりフリーランスライターとして、Webや雑誌などメディアを中心に、「ソーシャルデザイン」をテーマにした取材・執筆活動を開始。聞くこと、書くことを通して、自分が心地よいと感じる仕事と暮らしのかたちを模索し、生き方をシフトしている。

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