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チガサキゴトよ、チーガ

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YONCE を 巡る、 ROCK KIDS の つどい

文: よしつぐ   釈順正 
湘南ロックンロールセンターAGAIN

再始動したSuchmosの快進撃が止まらない。加山船長でいえば1976年の『海 その愛』、サザンでいえば1988年の〈みんなのうた〉とでもいえようか。修行期間を終え、次の境地へと進んだ彼らの活動から目が離せない。

そんな彼らの歩みとともに、茅ヶ崎の情景も移ろい始めた。すでにYONCEやSuchmosに憧れて音楽を始めた学生や、移住してきた人々も多い。筆者が幻想と呼ぶ「湘南サウンド」のイメージも多様化し、これまでにはない洗練を纏うようになった気がする。

今回は茅ヶ崎市出身・YONCEに影響を受けたROCK KIDSたちとの「つどい」を開催し、彼らの感覚や温度感を知ろうと試みた。これはいつまでも七〇年代から抜け出せない筆者自身への戒めであり、またこの街の次の時代を担う世代へのバトンとなることを願う。(釈)

Suchmos(サチモス)
2013年1月結成。YONCE (Vo)は茅ヶ崎生まれ。TAIKING (Gt)、TAIHEI (Key)、Kaiki Ohara (Dj)、OK (Dr)、初期メンバーHSUに代わり、Ren Yamamoto (Ba)が正式加入。修行期間を終え2025年6月、横浜アリーナ公演2DAYSを皮切りに再始動。

こ:自分たちが高2の時、茅ヶ崎FMで「一服(仮)」(※1)が始まって、毎回、生収録だと勘違いしていたんです。部活終わりに急いで自転車をこいで行ったら、誰もいないってことがありました(笑)。

ぜ:初めて見られた日は「公開収録します!」って、ちゃんと告知されていたんですよ(笑)。

釈:高校生だね(笑)。部活帰りにチャリで駆けつける、地元ファンの鑑だよ。

Suchmosとの出会い

あ:中2で親にベースを買ってもらって、その時にSuchmosを勧められたんですよ。元々東京事変のようなロックなサウンドが好きで聴いていたので、〈STAY TUNE〉を聴いたらこれがバンドから出る音なんだってびっくりしました。それと、この雰囲気で日本語っていうのも衝撃でしたね。

ゆ:僕は〈STAY TUNE〉がチャート入りしたら親が車で流すようになったので、それで聴いてましたね。それと小学生の時、茅ヶ崎の梅田でバスケやってて、調べたらYONCEさんも梅田で、同じ轍をたどってるじゃんって思ったんですよね。

釈:それはテンション上がるよね。地元特有の付加価値というか。

ぜ:僕は完全にホンダ・ヴェゼルのCMの〈STAY TUNE〉ですね。あの車と音楽の組み合わせに魅せられて、かっこいい! ってなりましたね。小さい頃から車が好きだったのも大きかったと思います。あの曲を聴いてると自分もあの映像の中にいる、イケてるって思えたんですよね(笑)。

よ:俺もヴェゼルのCMは鮮明に残ってます。高校でドラムを始めてから聴き直したらいいなって。こうたろうが詳しかったのも大きいですね。

釈:うん、楽器を触ると聞こえ方が変わるよね。

こ:自分は12、3歳上の兄がいて、ずっとかっこいい兄貴って感じなんですよ。小学生の時、兄がSuchmosを聴いていたので絶対的な信頼がありました。本格的に聴いたのは高校でベースを始めてからで、めちゃくちゃイカしてるなこの人達ってなりました。

ゆ:僕らの軽音部ではジャムセッションをするんです。SuchmosもD’Angelo〈Feel Like Makin’ Love〉をカバーしていて、それを見てやっぱりすごいなって惹かれました。

釈:なるほどね。みんな高校で軽音部に入る前から知ってはいたんだね。ヴェゼルのCMっていつ?

よ:2016年なので俺ら小4ですね(笑)。

釈:じゃあ、あかりさんは小2か!(笑)。

YONCEを形づくったもの

釈:YONCEさんがSuchmosのほかにも地元の仲間と音楽活動を続けているのは、単に仲がいいからだけじゃないと思うんだよね。

ゆ:(紙のメモを取り出し)YONCEさんは2017年のインタビュー(※2)で「海はすごく大事。近くに海があるかないかで精神に影響を与えてる。海が近くにある地元の空気の質感みたいなのがあって、そこからちょっと離れると落ち着かない」って言ってるんですよね。

釈:まず、今どき紙にメモってくれてるのがすごいうれしいね(笑)。加山雄三さんや桑田佳祐さんはね、「海しかなかった」とこの街・茅ヶ崎を表現するのよ。「海のある」環境だと、何が違うと考える?

ゆ:人工と自然って、対比で言えることだと思うんですよ。だから人工が都会、自然が地元だとしたら、自然から受けた感性に感謝があるからこそ、その感性で得たものを自然に還元したいっていう意図があるんじゃないですかね。だから地元の仲間とバンドを組んでいるんだと思います。

釈:なるほどね。アンチ都会みたいな歌詞で、都会っぽい曲を歌っているのもそこに関係してるかもね。桑田さんとかもそうなんだけど、一旦地元から出ていくのにはどんな意味があると思う?

ゆ:これもさっきと同じインタビュー(※2)からなんですけど、YONCEさんは「自分たちの核は『反骨』でその原体験は同調圧力への反発」って言っているんですよね。

釈:ほう、面白いね。

ゆ:そう思うきっかけとして、茅ヶ崎では中3で部活を引退したら地元の塾に行って、地元の公立高校に行くっていう流れがあったからって言ってましたね。だから、そうした地元の流れへのアンチテーゼとして、横浜や都会というモチーフを作品に取り入れたんじゃないですかね。

釈:今思えば、その流れは確実にある。でも、その疑問は僕が中学生の時には出てこなかった。早いよね。

こ:同調圧力で言えば、YouTubeの「Suchmostyle」(※3)で、Kaikiさんが「みんなが良いって言ってると、良いものでも良いって言えなくなっちゃう」って古着屋で話していて。昔の動画なので今は違うかもしれないけど、びっくりしました。

釈:確かにそれは引っかかるところがあるね。

ゆ:だから古着は好きっていうことも言ってましたね、用意されたものじゃないっていう。今はブームになっちゃってますけどね。

こ:古着は人と被らないもんね。

ぜ:再現性がないものに、価値を見出してるんだろうね。

釈:価値を大衆(Common)の中に置かない、それこそ天下一品だよね。

ぼくらが考えるYONCEの生き方

あ:YONCEさんに限らず、世間に評価されて有名になると、自分が伝えたいことと世間の評価にズレが生まれることってあると思うんです。でも大衆なしでは成り立たない。その「揺れ」はあると思います。

よ:大衆音楽だけど世間に迎合はしないっていう。世間に寄るのか、自分たちの表現を貫くのか、そのギリギリをずっと行ってる感じがしますね。

釈: 一流の人たちはそういったことを、背中で見せてくれている感じがするよね。

よ: 俺は一生葛藤するよって言ってる風に聞こえるんですよね。だから、悩んでいることに対してはもう悩んでいないと思います。

こ: Suchmosって、曲によって受ける印象が全然違うじゃないですか。例えば〈STAY TUNE〉では「ブランド着てるやつ もうGood night」と歌う。一方で〈BUBBLE〉では「素直な自分を見つけたらありのままに生きましょう」「今日あなたは成功者」と歌うんですよ。〈BUBBLE〉って、ありのままの自分を肯定してくれる曲に聞こえるんですよ。その歌詞に救われたこともある。

「自由」を考え続ける

釈:YONCEさんは2024年のインタビュー(※4)の中で「素の自分で」と言っても、人は場に応じて振る舞わなきゃいけない、と語っている。何をしてもいいのが「自由」ではない、ということはもちろん前提としてあります。でも、「ありのままに生きましょう」と歌うYONCEさんは、「自由」をどう考えているんだろう。

ぜ:俺はYONCEさんも絶対なんらかの制限があるなかで生きていると思っていて、「自由」って制限の中にしか生まれないので、その制限が何かによって変わっていくと思います。

よ:さっきのギリギリを攻めてるっていうのもそうだけど、常にYONCEさんが考える「自由」というものが変わってる気がしますね。そういうものの答えは一生出ないから、一生追い求めるみたいな。

あ:世間の評価も変わり続けますもんね。

ゆ:「自由」のほかに「愛」みたいな、答えのないテーマに関しても、一生追い求めるってことだよね。世界の捉え方に関してもう一個あって、YONCEさんは9年前のインタビュー(※4)で「多分、俺はこの歌詞の中で書かれているような人物になれたらこういうことを言わなくなると思うんですよ。もっと大きなことを言い始める。本当の平和とか愛のこととか」って言ってて、実際、最新のEP『Sunburst』は主に愛とか美しさについて歌ってる。

ぜ:確かに初期に比べたら、扱うテーマが広がってるから、一つの答えを伝えるというより、解釈を聞き手にゆだねてると思う。

あ:2019年のアルバム『THE ANYMAL』からは、何となく聴くというより、バンドが何を表現しようとしているのかまで考えながら聴くアルバムになった感じがします。

釈:BGMにはなり得ない、ながら聴きにはできないよね。

あ:そうなんですよ。でもそういうアルバムだからこそキャッチーな曲が回ってくると、おってなるんですよね。

釈:まとめると、YONCEさんは一生、何かしらの到達地点に接近し続けていくってこと?

ぜ:限りなく近づくけど、一生それにはなれないってことだと思います。

よ:再現性がないものこそが自由だと、YONCEさんは 考えてるかもしれ ないですね。

YONCEへの手紙

ぜ:俺はYONCEさんがグッズも土に還るような、消費できるものにこだわっているって聞いて、YONCEさんは自然環境に対して意識が高いと思うんですよ。一方で写真を見る限り、乗っているのは現行車の基準からすると非効率な車。それに対してシンプルにどう考えているのかは気になりますね。ロマンで乗ってるとは思うんですけど。

ゆ:俺が高3の時、コンビニにたまたまYONCEさんがいて、話しかけたことがあったんですよ。その帰り際に、YONCEさんが俺の動画を撮ったんですよ。友達にも撮られた人がいて、なんでファンの動画を集めてるのかっていうのは聞きたいですね。

あ:昔からYONCEさんが「言葉じゃ足りない、伝わらないよね」って言っていて、だからこそ音楽で伝えているんだと思うんです。その上で、なんで歌っているのかは聞きたいです。言葉も行動も音楽も、受け手によって捉え方が変わると思うし。他人に何かを伝えることをどう思っているか。

よ:〈GAGA〉のサビで「3本目は妥当にアメリか?」っていう歌詞があるんですけど、初めて聞いた時に映画の「アメリ」を知らなかったので「アメリカ」だと思ったんです。それで「三本目は妥当に」って言ってるので、原子爆弾のことを歌っているんだと思ってたんですよね。違っていたらそこで終わりなんですけど、YONCEさんの戦争に対して思うことも織り交ぜながら聞いてみたいですね。

参加者プロフィール

あかり(あ) 
高校3年生/高校ではベースを担当。HSUさん、Ren Yamamotoさんと同じ音大ジャズコースへ進学予定。

ゆら(ゆ)
大学2年生/高校ではベースを担当。最近DJ機材を購入。

ぜん(ぜ)
浪人生/高校ではベースを担当。将来の目標は自動車エンジニア。イタリアンレストランで鍋を振りながら受験勉強に励む。

よしつぐ(よ) 
大学2年生/高校ではドラムを担当。本稿では座談会部分の文章を担当。

こうたろう(こ) 
大学2年生/高校ではベースを担当。大学では神道を学ぶ。City’sのメンバーとして、湘南ロックンロールセンターAGAIN主催のイベントにも出演。

釈 順正(釈) 
茅ヶ崎市出身。湘南ロックンロールセンターAGAIN代表、茅ヶ崎市文化団体協議会副会長。仏教学者として研究に取り組むかたわら、茅ヶ崎ゆかりの音楽カルチャーについても執筆している。近著に『ぼくらの茅ヶ崎物語:日本のポップス創世記 茅ヶ崎サウンド・ヒストリー』(シンコーミュージック)。

注釈と出典

※1 茅ヶ崎FM「YONCE、TAIHEIの一服(仮)」隔週火曜   19:00-20:00放送。

※2 朝日新聞出版『AERA』No.30、p.35(2017年7月3日 ) 

※3 SPACE SHOWER TV「Suchmostyle | Suchmos Presents Yokohama City Guide – YONCE & KCEE編 –」(YouTube、2019年8月1日公開)

※4 NiEW「Hedigan’sインタビュー後編 音楽が不憫だから、草の根でやっていくことがある」(2024年4月19日)

※5 ROCKS ENTERTAINMENT『GOOD ROCKS!』Vol.82、p.23(2017年1月25日)

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